昆虫類は深海を除いた地球上のあらゆる場所で生息できるほど、環境への適応力は優れています。それは次のような様々な手法を用いて環境耐性を強化しているからです。

(1)休眠

これは、地球の季節変動などによって繁殖や発育に適していない期間には、その間は代謝活動を低下させるのです。そうすると、行動は鈍くなりますが、極端な寒さなどに対して抵抗できるようになります。

そして、活動に適した季節が来るまでエネルギーを温存しています。

(2)耐寒性

昆虫は、熱帯地方で誕生したため、高緯度地帯に進出するためには、「休眠」だけでは不足で、耐寒性も進化させる必要がありました。

昆虫の耐寒性は、一部凍結しても耐えられる程度の耐凍型と、凍結には耐えられない非凍結型の2つのタイプがあります。

耐凍型の昆虫は、耐凍性を増すためグリセロールやトレハロース等の不凍化物質の生成をして、それを体液に蓄積しています。

そのため、寒くなると細胞内にある水と、体内に蓄積した凍結保護物質を交換しています。そのため細胞内は凍結保護物質が充満して凍りにくくなることから、極寒地域でも生き延びられるのです。

尚、休眠昆虫は、秋になって低温にさらされると不凍化物質を体に溜めはじめますが、休眠しない昆虫は、低温にさらされても、不凍化物質を蓄積することはありません。これは、地域環境に応じた必要最低限の機能だけを持っているためと思われます。

(3)耐乾性

体の小さな昆虫は体積あたりの表面積は大きいために、水分は蒸発しやすくなります。このため、一般的な昆虫は、体表をワックスで覆うなどの方法を駆使して水分蒸発防止策を進化させています。

ところが、特別の環境で生き延びるために特殊な能力を持った昆虫もいます。

ネムリユスリカという種は、アフリカのナイジェリアの半乾燥地帯で生息している昆虫です。この昆虫は、岩のくぼみなどの水たまりに産卵しますが、この地域の降雨は不定期で雨が降らない時には、水たまりは完全に干上がります。

普通の生物なら、卵から孵化(ふか)した幼虫は、直ぐに死んでしまうところですが、このユスリカの幼虫は、無代謝状態になって半永久的な休眠に入ります。この時、ユスリカの幼虫の体は、水分が抜けてカラカラに乾燥しています。

そして、雨が降ると体が膨らんで発育を始めるそうです。乾燥状態が10年も続いても水を与えられることで復活できると言われています。

こんなことができるのは、体が乾燥しだすと「トレハロース」という糖の一種を爆発的に合成することから、この「トレハロース」の特性が、乾燥状態で休眠している体を維持していると考えられています。

尚、地球上の殆どの環境(含む、深海)でも生息している緩歩動物の「クマムシ」類も、ユスリカの幼虫が持っているのと同じ方法で、乾燥状態で長期間休眠できます。