ハキリアリの集団居留地とも言える巣ができると、少しずつ蟻の数が増えていきますが、2年も経過すると、その後は急速に増えます。そして翅の生えた雄と雌が生まれるころは、増加のペースはおちついてきますが、5年も経過すると、蟻の集団居留地は途方もなく巨大な規模になります。

ハキリアリ属の分業については、様々な研究でその内容が判っています。次に、ハキリアリ属の「トゲハハキリアリ」と「チャイロハキリアリ」の分業の内容を紹介します。

年数の経った巨大な巣に住むものは、頭の幅で8倍ものサイズの違いがありますが、巣が新しくできた頃は、はたらき蟻の体長は、ほとんど同じような大きさ(頭の幅は0.8mmから1.6mm程度)です。

それは次のような理由によります。

*菌類の世話をするはたらき蟻の幅は、0.8〜1mm程度が適している。

*平均的な葉を切り取るには頭の幅が1.6mmないと無理と思われる。

*子育てを担当するには、0.8〜1.6mm程度が適している。

このような理由から、巣が小さい内は、必要最低限の仕事がまかなえるように、女王蟻が「はたらき蟻」の数を増やすことに専念しているためです。

そして、巣が大きくなるに従って、しっかりした集団居留地にしていくために仕事の範囲を広げて、それに適した個体のグループを女王蟻が生むようになることから蟻のサイズは業務ごとに違ったものになっていきます。

そのような理由から、小さい個体の頭の幅が0.7mm程のものから大きな個体は、5mmを越えるものまで生まれてきます。それは複雑な階級制度を構成しますが、しっかりとした分業を行うために作られています。

「はたらき蟻」が菌類の世話をする時は、流れ作業式に仕事を分担して行います。まず、葉を持ち帰る蟻(頭の幅は2mm-2.2mm)たちが巣に戻ると、床に葉を落とします。すると、それよりも小型の「はたらき蟻」達が葉を拾い上げて1mm-2mmぐらいに細かく嚙み切ります。

それが済むと、さらに小型の「はたらき蟻」達が現れて、葉を粒状に押し固めたり、そこに糞を落としたりして粒を完成させます。そして、この粒を菌園の土台につけたしします。

すると、最も小型の「はたらき蟻」達が出てきて菌園を見回ります。そのやり方は丁寧で、触覚で撫でるようにして菌の様子を調べ、菌の表面をなめてきれいにしたりします。もしも他の菌などが生えてきたら、それらを取り除きます。

尚、作業の分担は体長だけではありません。若い「はたらき蟻」は巣の中で仕事をすることが多く、年長の蟻は巣の外で作業をすることが多いそうです。

特に最も小型のグループの年長の蟻は、大型の蟻が葉を抱えて運んでいる葉の上に乗って寄生バエから大型の蟻を守ります。そして寄生バエがいない時には、葉に付着したカビ等を取り除く作業もしていることが判っています。

これらの「はたらき蟻」とは別に、さらに大型の「兵隊蟻」という階級もあって、脊椎動物のような大型の敵を撃退する時に働いています。

このように労働階級が複雑に分かれているのは、トガリハキリアリ属とハキリアリ属だけに見られる特徴と言われています。

体の大きさまで変えて仕事に適した個体を作り、年齢に適した職務分担までしているのには驚かされます。蟻社会のすごさには、なおいっそう興味をそそられてしまいました。