ハヤブサという鳥は、地球上で最も速い生き物です。陸上で最も速いチーターは秒速33.5mという記録を持っていますが、ハヤブサが獲物を獲る時の急降下では、秒速108m(時速390キロメートル)という記録があります。

このようにハヤブサは運動能力抜群の鳥です。そのため、森林がなくても、太ったハトが沢山いる大都会のロンドン等は、ハヤブサの格好の餌場でした。そのため、都会でも多くのハヤブサたちが繁栄していました。

そんなハヤブサでも、絶滅の危機はありました。

(1)イギリスの航空省から睨まれたハヤブサ

第二次世界大戦では、ハトは伝令をするための重要な戦力でした。ところが、伝書鳩はハヤブサに簡単に襲われてしまいます。そのため、伝令が伝わらないことから、ハヤブサはイギリスの航空省から目の敵になって、大幅に数を減らしてしまいました。

伝書鳩は、飛行機が撃墜された時に、司令部に危急を知らせるために戦闘機に乗せられることが多かったようです。こんな重要な情報がハヤブサのために届かないというのは、その任務を担う部門にとっては死活問題だったのだと思います。

それにしても強力な武器を持っている戦闘員を敵にまわしてしまった、ハヤブサたちはアンラッキーでした。戦争が終わる頃には、ハヤブサの数は激減していました。

但し、ほぼ全世界に分布していたハヤブサは、その後の保護活動で急速に数を増やして、1955年には、イギリスでも戦前と同じくらいの復活をとげました。

(2)農薬によるハヤブサの危機

第二次世界大戦後、順調に復活していったハヤブサでしたが、その後、減少し始めたのです。

ハヤブサのテリトリーは確保され、豊富な餌場もあるのに何故か、雛(ひな)が育ちませんでした。

その後の研究で、雛が育たない理由が判ってきました。それは、農薬に使われていた殺虫剤のDDTが影響していたのです。

ハヤブサなどの猛禽類(タカ、フクロウ等)は、小さな鳥を何100羽も食べて生きています。そして、小さな鳥は農薬にさらされた穀物を食べていますので、ハヤブサの体内には濃縮された農薬(DDT)が蓄積してしまいます。

その影響で、ハヤブサの卵殻のカルシウム分が少なくなり、雛が孵(かえる)時期よりも前に、卵が割れてしまうことが判りました。(ハヤブサ以外の猛禽類も同様でした)

このことが判ってきてからDDTの農薬散布は世界中で禁止され、ハヤブサの数は世界全域で回復したのです。

世界一速くて、鳥類の食物連鎖の頂点にいるハヤブサでも、人間が作りだした毒で絶滅してしまう危険があります。

人の行動は他の生き物たちの生死に大きな影響を与えてしまいます。また、人は地球上の生物の食物連鎖の頂点にいます。ハヤブサの危機は、まさに人類への警鐘です。

幸い、現在のハヤブサは、適応能力の高さから大都会の高層ビル群でも繁栄しています。ハヤブサが生き生きと活動できる地球環境にしていく努力は、人類が生きのびる手段でもあるでしょう。