今年の夏は雨が多かったのですが、セミたちは一生懸命鳴いていました。

その昔、有名な昆虫学者のファーブル先生は、セミが鳴く理由を確認するために、大砲をズドンとはなちました。

その当時も、セミが鳴くのはメスを引き寄せるためと考えられていましたが、ファーブル先生は、セミには耳がないのではないかと疑っていたからです。何故なら、セミの体を観察しても耳らしい器官がなかったからです。

案の定、大砲の大きな発射音を響かせても、セミ達は我関せずという風情で鳴き続けました。これを見たファーブル先生は、やはりセミには耳がないと考え、セミ達は鳴くのが楽しいから鳴いていると結論づけたそうです。

しかし、鳴いているセミに、こっそりと近づいても直ぐに逃げてしまいます。セミは、一体どうやって人の気配を察知しているのでしょうか?

後で判ったのですが、セミには耳がありました。

セミの耳は、後ろ脚のつけね付近にあるフタの下にあります。このフタは復弁(ふくべん)というもので、後ろ脚の左右にあります。

このフタ(復弁)をめくってみると、白い膜がありますが、これが空気の振動を増幅して内耳に伝えるセミの鼓膜(こまく)です。

たしかに、こんな所に隠されていたのでは判りませんね! さすがのファーブル先生も見逃してしまったのです。

でも、何故、耳があるのにセミは大砲の音に驚かなかったのでしょうか? 不思議ですね!

セミが大砲の音に驚かなかった理由

セミは、何故、大砲の大きな音に驚かないで、合唱を続けたのでしょうか?

これを理解するには、音について知る必要があります。次に簡単に説明します。

音の表し方

音は空気の波(微小な圧力変動)で作られています。この空気の波が、耳の鼓膜(こまく)を振動させることで、音として認識することができるのです。

この波の振動は、1秒間に何回振動するかで表していて、周波数と呼ばれています(周波数はヘルツという単位で表現されます)。

例えば、振動回数が多い音(高周波)は、「キーン」というような高い音で、振動回数が少ない音(低周波)は、「ゴオ~ン」というような低い音になります。(音の音圧レベルは、周波数ではなく、デシベルという単位で表しますが、これについての説明は省きます。)

尚、生物が音として聞き取ることができる周波数の大きさは、生物の種類によって違います。人の場合は、周波数が、およそ20ヘルツ~20,000ヘルツの範囲の時に聞き取ることができます。

このように聞き取ることが出来る周波数帯のことを「可聴周波数」と呼んでいます。

セミの可聴周波数帯と大砲(発射音)および人の気配音の周波数の関係

あまり正確な情報ではありませんが、セミの可聴周波数帯は、およそ1000ヘルツ~10,000ヘルツと言われています。(人の可聴周波数帯よりも狭いようです)

そして、大砲の発射音は低周波です。

人の可聴周波数は、20ヘルツ~20,000ヘルツですが、セミの可聴周波数は、1000ヘルツ~10,000ヘルツで、セミは人に比べて低周波帯も高周波帯のどちらも聞き取れないようです。

そのため、人には大音量で聞こえる大砲の音(低周波)でも、セミには気づくことができなかったのです。

また、セミにこっそり近づく人の気配音(足音や服の擦れる音等)は、セミが聞き取ることのできる周波数帯(1000ヘルツ~10,000ヘルツ)が含まれるため、セミは直ぐに察知して逃げることが出来たのです。

セミが鳴く理由

セミには腹部の足の付け根付近に耳が隠されていて音を聞くことができましたが、セミが大砲の発射音に驚かないで大合唱を続けたのは、大砲の発射音のような低周波音が聞こえなかったからでした。

そして、一生懸命大合唱するセミ達は全て雄でした。

大きな声で鳴くことのできるセミには、雌のセミが寄ってくるそうです。つまり、セミが鳴く理由は、雄のセミがメスに求愛をしていたことになります。