冬の終わり頃に河川敷を散歩すると、肌寒さで気持ちも暗くなってしまいますが、黄色の鮮やかな花が咲いているのを見ると、ほっとします。

その花はタンポポですが、そのほとんどはセイヨウタンポポだと言われています。

セイヨウタンポポは、日本に来てからあっという間に増殖しました。そしてその理由は、次のようなものです。

日本でセイヨウタンポポが大増殖した理由

セイヨウタンポポは、基本の染色体数が三倍体のために、通常の花粉や卵が作れません。そのため、二倍体のような有性生殖ができません。その代わりに、一株でも種をつけることができる無性生殖で子孫を増やす能力を身につけました。

そのようにしてできた子孫は、遺伝子が同一のクローンです。クローン増殖は交配の過程を経ないで子孫を作るため、余分なエネルギーをかけないですむために、あっという間に数を増やすことができます。

また、セイヨウタンポポは成熟が早いだけでなく、春のみに咲く在来種と違って、春から秋まで咲くこともできます。

セイヨウタンポポは、このような在来種が持っていない優れた性質によって爆発的に増殖することができたと言われています。

《二倍体と三倍体とは?》
普通の生き物は、父と母からそれぞれ一組ずつ染色体をもらい受けています。このように2色の染色体を受け継いだものを二倍体と言います。二倍体は有性生殖で子孫を増やしますが、三倍体は3組の染色体を持っているために、正常に花粉や卵を作ることができません。

そこで三倍体のセイヨウタンポポは、自分と同じ遺伝子をもつ種(クローン)をばらまいて子孫を増やす能力をみにつけたのです。このように、セイヨウタンポポは、無性的に子孫を作ることができます。

在来種のタンポポが単為生殖を選ばない理由

では、在来種のタンポポは、セイヨウタンポポのように優れている性質を多く持っている、単為生殖を選ばない理由は何でしょうか?

その理由は、病気や環境の変化に対する耐性を保つためです。

セイヨウタンポポのようにクローンという手法で子孫を増やしていくと、同じ遺伝子を持つタンポポだけになってしまいますが、受粉や受精を必要としている有性生殖では、おしべとめしべの組み合わせで、様々な性質を持っているタンポポの遺伝子を引き継ぐチャンスがあります。

同じ遺伝子では、この病気には特別強いとか、暑さor寒さには強い等の異なった性質を持つ子孫は出現しないため、何か問題が生じた時に、一度に全滅してしまう可能性があるからです。

セイヨウタンポポが、鮮やかな黄色い花を咲かせる理由は?

セイヨウタンポポは、受粉や受精を必要としていませんが、とても鮮やかな黄色の花を咲かせてポリネータの昆虫たちを誘っています。

昆虫たちは、花粉や蜜をめがけて黄色の花にやってきますが、セイヨウタンポポはボランティアで昆虫たちに美味しい食べ物を提供しているのでしょうか?

実は、セイヨウタンポポは、生き残るためにクローンの中に生殖能力をもつ花粉を作るものを忍び込ませていたのですそれは、雄としての有性生殖をすることができます。

そのため、雌としての繁殖能力を持っているカントウタンポポなどの在来品種との交配をして生まれた様々な雑種を作り出すことに成功しています。

このようにして作り出された雑種タンポポは、セイヨウタンポポと同様に盛んに増殖して分布を拡大しています。

つまり、セイヨウタンポポは、趣味や道楽で鮮やかな黄色の花を咲かせてポリネータの昆虫たちを誘っていたのではなかったのです。生き残りをかけて子孫繁栄の道を作っていたのです。

逆に、在来のタンポポからみると、通常の二倍体だけの道から、一歩踏み出して未来の道を切り開いたといえるかもしれません。