植物と小さな虫たちの関係を考えた時、
普通に思い浮かべるのは、虫たちが植物から蜜や花粉をもらう代わりに、虫たちは植物の種子を実らせるお手伝いをする等の共存共栄だと思います。

人から見ると、そのような共存共栄の関係(美しい関係)は、
厳しい自然界で生きていくための一つの手段として生まれたもので、本当は自分たちが生き残るためにお互いに利用しているだけの関係です。

共存共栄の関係は、たまたま結果として、そういう形になったと考えた方が良さそうです。
このことを示している実例を次に紹介します。

ポリネータのハエをだまして受粉させる花

南アフリカ原産のガガイモ科の植物「スタペリア・ギガンテア」は、凡そ10㎝の星型の花を咲かせます。

花というと、美しいものを思い浮かべますが、その花は薄い褐色で、しかも多くの筋が見えるグロテスクという表現がぴったりするような花です。

そして、その花の匂いは腐臭を漂わせます。

この花は、この腐臭でハエを誘っていたのです。

日本では、国立科学博物館筑波実験植物園のサバンナ温室で、この花を見ることができます。
「スタペリア・ギガンテア」の花が咲き始めると、ハエが集まって来ます。

集まってきたハエは、ポリネータとしての役目を果たすため、
「スタペリア・ギガンテア」は、りっぱな果実をつけることができます。

ところが、ハエは、「スタペリア・ギガンテア」に騙(だま)されていたのです。

ハエから見ると、この花との関係には何のメリットもないことが判りました。

ハエが騙された理由

ハエが「スタペリア・ギガンテア」の花に集まるのは、花から漂う、腐臭に誘われたためですが、

その理由は、

ハエは、腐臭がするために汚物があると思い込んでしまうからです。

ハエが花の中に潜り込むのは、騙されたからです。ハエは、腐臭に誘われて汚物に卵を産み付けにきたのです。

ハエが花に入ると、花粉を受け取った花は受精することができます。

その後、「スタペリア・ギガンテア」は果実を付けて子孫を残しますが、
ハエは、やがて枯れてしまう花の中に卵を産みつけたため子孫は残せません。

ハエは騙されただけで、何のメリットもありません。

今回の例は一例ですが、自然界の共存共栄は、人が思っているほどのん気なものではないようです。

 

次のマムシグサとハエの関係も、上の例に似ていますが、もっと厳しい関係でした。

日本にあるマムシグサも、ハエの好む腐食匂を漂わせて、筒状のホウに誘い込みますが、受粉の手助けをしてくれたハエが外に出る穴はありません。
このハエはメリットを受け取るどころか、命までマムシグサに捧げる羽目になってしまいます。

自然界の共存共栄の関係は、ちょっと間違えると厳しい世界ということを改めて実感しました。