アリは、攻撃的で同種のアリでも巣が違うと仲間として受け入れませんが、実はすっかりアリになりすまして居候(いそうろう)をする昆虫たちもいます。

普通の昆虫たちにとってはとても危険なアリの巣に入ってまで生活しようとする理由は、アリの巣の周辺や巣の中には、食べ物の残りかすなどが多くあるからだと思われます。

学問的には、アリに依存して生活する昆虫のことを好蟻性(こうぎせい)昆虫と呼んでいて、アリをだまして巣に棲み、幼虫等を食べてしまう恐ろしいものから、アリから餌をもらって生活するタイプまで様々なものが知られています。

但し、アリの巣の中は調べにくいため、調査研究は難しいようです。しかし、好蟻性昆虫は既に10目100科以上に分類されています。

今回は、好蟻性昆虫の中でも、比較的穏やかな、居候(いそうろう)タイプの昆虫を紹介します。

アリに口移しに餌をもらう「クロシジミ」チョウの幼虫

「クロシジミ」というチョウの幼虫は、まさにイモムシですが、クロオオアリの巣の中でアリから口移しに餌をもらって生活しています。

クロオオアリの雄アリは成虫になると巣の外に出て行きますが、大あごが発達していない幼虫時には、自分で餌を食べることができません。そのため、働きアリに口移しに餌をもらって生活しています。

「クロシジミ」は、このようなクロオオアリの雄アリの生活を知っていて、クロオオアリの雄アリに似た匂いの成分を出します。

そして、「クロシジミ」の幼虫(イモムシ)は、クロオオアリになりすまします。

こうして、チョウの幼虫の匂いに騙されたクロオオアリは、チョウの幼虫を巣に運びんで餌を与えて育てるのです。

アリに口移しに餌をもらう「ハケゲアリノスハネカクシ」

上の「クロシジミ」と似た例ですが、「ハケゲアリノスハネカクシ」というハネカクシの仲間(昆虫)は、クロヤマアリの巣の中に潜んでいて、アリから口移しに餌をもらっています。

「ハケゲアリノスハネカクシ」は、クロヤマアリの成虫になりきっていない程度の幼虫の姿とそっくりの姿をしています。

但し、アリは同種のアリでも巣が違うと仲間だとは思いません。

そんなアリが「ハケゲアリノスハネカクシ」を仲間だと認識するのは、匂いのためだと思われます。

「ハケゲアリノスハネカクシ」がクロヤマアリの巣に入り込む方法

クロヤマアリに遭遇した「ハケゲアリノスハネカクシ」は身体から、アリが好む特殊な匂いを出します。そして、怪我をしているようなしぐさをして、アリに腹部から出る匂いを嗅がせます。

クロヤマアリは、「ハケゲアリノスハネカクシ」を抱えて巣に持ち帰りますが、その時に「ハケゲアリノスハネカクシ」は、クロヤマアリの匂いを自分の体に付着させることで、クロヤマアリになりきってしまうようです。

そのため、アリの巣の中では、クロヤマアリの幼虫として認識され、働きアリたちから口移しで餌をもらうことができるのです。

尚、「ハケゲアリノスハネカクシ」の成虫は、このようにクロヤマアリの巣で生活していますが、新しく羽化した成虫は、別のアリ「クシケアリ」の巣に移動して越冬します。

そして、春になるとクロヤマアリの巣に入り込むという生活をするようですが、実はクロヤマアリの巣の中には、侵入に失敗したと思われる「ハケゲアリノスハネカクシ」残骸が散らばっています。

一見、気軽な居候(いそうろう)に見えても、現実は喰うか食われるかのすさまじい世界のようです。