これは、サイエンスという雑誌の11月3日号に発表されたものです。
東京大学分子細胞研究所の研究チームが行った、キイロショウジョウバエを用いた昆虫の触覚神経回路の構造解明から次のことが判ってきました。

視覚・嗅覚・味覚の神経回路の構造は、脊椎動物と節足動物では似通っていると知られていました。また、昆虫(節足動物)と哺乳類(脊椎動物)では、音や重力を感じる中枢構造もほぼ同じことも、同研究チームによって究明されていました(2009年のネイチャー誌に発表)。

そして、今回の研究結果をつけ加えると、五感を備えた脳を持つ生物が、先カンブリア紀(凡そ6億年前)に存在していたらしいということが判りました。

つまり、哺乳類を含む脊椎動物と昆虫を含む節足動物の祖先は同じ生物だったということです。(そうだとすると人間と昆虫の祖先は同じだった可能性があります)

東京大学の研究チームが行った成果

■昆虫の触覚を検知する抹消神経から脳の中枢神経系に至る神経回路を体系的に解明できた。
■感覚神経系の特定の1種類だけの神経活動を抽出して、その神経だけの機能の操作をできるようにした。
これは、哺乳類の実験では不可能でした。
■昆虫の神経回路の構造は、哺乳類と類似性が高いことが判りました。
このことから昆虫と哺乳類の脳の構造はほぼ同じであることがわかり、
共通の祖先がいた可能性が高まりました。

尚、節足動物(含む昆虫)と脊椎動物(含む哺乳類)は、カンブリア紀の前のエディアカラ紀(凡そ6億2000年前-5臆4000万年前)の終わりには既に分かれていたことが知られていました。

そして、昆虫と哺乳類は共通の祖先から分岐した可能性が高いという結果は、今回の研究チームによってはじめてもたらされました。

昆虫の研究で究明される素晴らしい成果

2017年度のノーベル医学生理学賞は、体内時計の分子メカニズムの発見でしたが、この仕組みはショウジョウバエの研究で発見されてから後に、哺乳類でも同じものだということが判ったものでした。

それを踏まえると

今回の東大の研究チームが発見した昆虫の触覚神経系の構造究明で明らかになった哺乳類と昆虫の類似性は、これからの昆虫の研究によって、哺乳類で判っていない事柄の解明に寄与する可能性があります。

今回のキイロショウジョウバエでは、感覚神経系の特定の神経活動を選びだして、その神経の機能の操作をできるようにしています。これによって哺乳類の実験では不可能な神経回路構造の解明ができています。

今回究明した研究成果を踏まえて、さらなる研究の進展に期待が膨らみます。