社会性昆虫のアリの不思議な行動

アリの写真

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三重県紀北町(きほくちょう)の働かないアリ(アミメアリ)は、アリの研究者たちによって発見されたものですが、アリ好きの人々には不思議なアリの行動として有名です。

アミメアリは日本のどこにでもいるアリです。本サイトでも「女王アリのいないアミメアリの社会(2018/6/25)」という記事で紹介していますので、アミメアリの概要は判るでしょう。

今回は、紀北町(きほくちょう)にいることが確認された、働かないアリ(アミメアリ)に焦点を当てて、紹介することにします。

働かないアリの発見

働かないアリは、1982年頃に、三重県紀北町(きほくちょう)でアリを観察している人が発見したものです。それ以来、さまざまな研究者が観察研究してきました。

そして、2013年には琉球大学の辻和希教授と京都大学の土畑重人研究員(現、助教)の共同研究で、子をたくさん産むけれど「働かないアリ」と、働き過ぎて過労死をしてしまう「働きアリ」についての論文が発表されたことで注目を集めるようになりました。

アミメアリは、普通のアリと違って、女王アリがいないアリです。アミメアリは、全員が卵を産んで皆でエサを与えて子育てをします。つまり、皆、平等で階級はありません。

一見するとアミメアリは、理想的な社会を作っていますが、アミメアリの中には、卵を産むだけで、その後は何もしないアリがいることが確認されています。

働かないアリから産まれたアリは働くの?

「働かないアリ」は、遺伝子的に決まっていて、「働かないアミメアリ」の子は、やはり「働かないアリ」ということが判っています。そんな働かないアミメアリが多くの卵を産んで子孫が増えると「働かないアリ」が増えてしまいます。何だか、不気味ですね。

働かないアリが増えるとどうなるの?

働かないアミメアリは、働くことにエネルギーを使わなくて済むため長生きして、その分だけ卵を余分に産むことができます。卵はいっぱい産まれますが、「働かないアリ」は、子育てをしません。

ところが「働かないアリ」が増えて、「働くアリ」たちの比率が少なくなると「働きアリ」の負担は極めて重くなり、やがて過労死をしてしまいます。

その結果として、「働きアリ」の数は減って、「働かないアリ」の割合がますます増えてしまいます。

働かないアリだけを集めた実験

「働かないアリ」だけを、集めて一つのビンで飼育すると、「働かないアリ」の集団は、掃除もしないため、ビンは汚くなって、多くの卵は死んでしまうことが確認されています。

実際のアリの巣では、「働きアリ」がいるため暫くは生存できますが、やがて「働かないアリ」が過半数を超えるとエサも無くなって、子供も成長できなくなります。そして、巣が汚れて不衛生になると、巣は消滅してしまうでしょう。

なお、普通の「働きアリ」の遺伝子は、巣ごとに違うことが判っていますが、「働かないアリ」の遺伝子は、どの巣でも同じ遺伝子を持っていました。このことは、「働かないアリ」のルーツは1つで、もともと棲んでいた他の巣から入り込んできたことを示しています。

恐らく、「働かないアリ」は、棲んでいた巣が消滅する前に脱出して、別の巣に逃げ込んだのでしょう。

アミメアリが消滅しない不思議

アミメアリは、「働かないアリ」が増えて巣が消滅してしまう危機があります。しかも「働かないアリ」は、他の巣にも潜り込んで生活しているためどんどん増えてしまうことが懸念されます。

そんなアミメアリですが、既に1万年以上の歴史を持っています。何故、アミメアリは、現在も繁栄しているのか、研究者たちは、その理由を確認しようとしています。

まとめ

アミメアリは日本中に生息しているアリですが、働かない遺伝子をもっているアリがいることが判ってきました。

しかし、遺伝子レベルで働かないアリがいるアミメアリは、1万年以上の歴史を持っています。彼らは、何故、撲滅しないのか、また、「働きアリ」たちは、何故「働かないアリ」たちを攻撃しないで見過ごしているのか、考えてみるととても不思議です。

社会性昆虫のアリの不思議な行動の解明は、人の社会生活にも役立つかもしれません。将来、アミメアリの「働かないアリ」の研究は進んで、私たちに道標を示してくれるかもしれません。すごく期待しています。