昆虫の機能や形、生活様式等から学んだ応用技術(空調設備)

 

生物が長い進化の過程で形づくってきた形態や機能は、自然にマッチしていて、しかも生き延びるための工夫が集結しています。

バイオミメティクスは、生物が持っている優れた機能や形をまねしてそれを、工学や医療分野などに応用することですが、これを、昆虫に特化して表現したものが昆虫ミメティクスです。

昔から昆虫は、多くの民族の食用に供され、絹やハチミツを提供したりする益虫として人々に愛されてきました。ところが、バイオミメティクスという観点で昆虫をみると単に資源として役立つというだけではなくて、昆虫の形態や機能には優れていて、学ぶべき点が数々あることが判ってきました。

昆虫ミメティクスとして活用すれば、人類の発展に役立つとともに地球環境の保全維持にも寄与することは、既に色々研究されています。この中のいくつかを少しずつ紹介していきます。

《蟻塚をモデルにした自然冷却の工法で建てられたショッピングセンター》

アフリカにあるジンバブエ共和国のハラレ市は、標高1600mのため、夏でも平均気温は20℃と少し涼しいところにありますが、ここに蟻塚をまねして作られた自然冷却工法で建てられたイーストゲートショッピングセンターがあります。

これは、1996年にオープンした9階建ての建物ですが、エアコンなどの人工的な設備を設置しないで年中快適に過ごせる換気を実現させました。これと同規模の通常の建物と比較すると、換気・冷房にかかるエネルギーを90%程度削減したと言われています。

この建物のモデルになったのは、アフリカのサバンナにいる「オオキノコシロアリ」の一種です。この蟻の蟻塚は、地上10mにもなる大きなものですが、蟻たちが土を唾液で固めて少しずつ作ったものです。

シロアリは薄い表皮のため、気温や湿度の変化には敏感ですが、サバンナの気候は激しく、夏の昼間は45℃にもなりますが、冬の夜間は0℃になります。

蟻塚の外は、こんなにも激しい気候ですが、巣の中は常に30℃程度に保たれています。巣の中にはシロアリ達が食料として栽培しているキノコ菌があって、それらからは二酸化炭素が排出されます。また、数百万匹もの蟻達も呼吸していますが、常に新鮮な空気が流れています。

蟻塚を詳細に観察すると、塚の表面には無数の穴があって、その穴は巣の内部のトンネルにつながっています。このトンネルは煙突効果で換気口の役目を担っています。

蟻塚を作っている土には目に見えない小さな隙間が、断熱効果や湿度調節機能を果たしていますが、これとは別に、キノコ菌が発酵する時の熱で塚内の温度を上げ、また、蟻達が湿った土を上部に運んで水分が蒸発する時に発生する気化熱で、塚内の温度を下げるなども機能しているため、いつも快適な雰囲気に保たれているのだそうです。