ヒガンバナは、自然界が創った妖艶な造形美の極み

ヒガンバナは、秋風が吹き始める頃に、群れて赤い花を咲かせます。

子供の頃は、赤色に怖いというイメージをもっていたのと、墓地に沢山咲いていたということから、ヒガンバナに対して、意味もなく良い印象を持っていませんでした。

ところが、大人になってみると、自然に創られたものとは思えない程の妖艶な美しさに気づかされてしまいました。

ヒガンバナを調べてみると、日本への伝搬の仕方や、種子を持っていないヒガンバナが、日本各地に広く分布していった経緯など、私が知らないことばかりでした。

ヒガンバナの概要

日本では、広く分布していることから、日本の花と思っていましたが、原産は中国でした。中国でも最も多く観られるのは、揚子江の中流域付近です。

中国から日本に伝搬した方法は、揚子江の洪水によって、土手に群生していたヒガンバナの球根が海に流され、九州に流れ着いたという説と、人手によって九州に持ち込まれたという説があります。

ヒガンバナの学名(Lycoris radiate)にあるLycorisは、ギリシャ神話の海の女神の名前です。

このことから、球根は海から流れ着いた可能性が高いのでは(?)と想像してしまいます。
何だか、ロマンを感じてしまいます。

このようにして、九州に入ってきたヒガンバナは、その後、日本各地に分布を広げて行ったと考えられています。

但し、ヒガンバナは、種子がならない「不稔性植物フネンセイショクブツ」のため、自然界で日本中に広がって行くことは考え難く、人手によって広がったと言われています。

和名:ヒガンバナ
科名:ヒガンバナ科
生態:多年草(花期:9月)、球根性植物
背丈:30〜50㎝
別名:マンジュシャゲ、ハミズハナミズ、シビトバナ、ソウシキバナ等々
学名:Lycoris radiate
花の特徴:6枚の花弁が輪形に並ぶ
地下の鱗茎:有毒(食用や漢方にするには、解毒処理要)

種子の無いヒガンバナが、日本各地に広がった理由

ヒガンバナは種子を持たないで球根で育つため、毎年同じところから生えてきます。

ヒガンバナが日本各地に伝搬して行った理由は、ヒガンバナが持っている毒性にあると言われています。

ヒガンバナは、人手によって分布が広がりました。

人々は、引っ越しをするたびにヒガンバナの球根を持っていき、新居近くの田んぼのあぜ道や土手に植えたのです。

日本人は農耕民族でしたから、土に穴を掘る小動物の侵入を避けるため、地下の鱗茎に毒を持っているヒガンバナを植えたと考えられています。

又、墓地にヒガンバナが多い理由も、土葬で埋葬された御先祖を小動物から守るためと考えられています。

薬用としてのヒガンバナ

ヒガンバナは有毒ですが、球根はむくみを解消する薬用としても使われていました。
さらに、球根には良質のでん粉を多量に含んでいることから、飢餓の時などは非常食としてでん粉が利用されました。

球根には、リコリンというアルカロイドが含まれていて毒性は強いのですが、無毒のでん粉だけを取り出す工夫をして用いたようです。(但し、しっかりと解毒を施さないと中枢神経の麻痺や、ひどい場合には死に至ることもあるので、専門家による対応が必要です)

ヒガンバナの咲き方

ヒガンバナは、葉が出てくる前に花茎を長く伸ばして、その先端から伸びた短い柄から真っ赤な六弁の花びらを大きく反り返らせて咲きます。

花びらの長さは、4㎝、幅は5mm程度です。短い柄は、5〜7個程あって、それぞれに花びらがついています。

そして、花が満開の時を過ぎて無くなった時(晩秋の頃)、長さ30〜50㎝の細い葉を地表に水平に並べるように出てきます。

この葉は翌春になると枯れてしまいますので、秋になるまで、そこには何もなくなります。

このような形で花を咲かせたり、葉を出すため、ヒガンバナには、ハミズハナミズ(葉見ず花見ず)という別名が生まれました。