アリジゴクの巣の形態と頑固な共通点
アリジゴクはウスバカゲロウ類の幼虫です。アリジゴクと呼ばれているのは、彼らが作ったすり鉢の形をした巣に、アリが落ちた時に、土がサラサラしているため簡単には逃げられないことから、そのように命名されたのだと思います。
丁度、アリ程のサイズの小動物は、大抵アリジゴクの餌になってしまいます。
アリジゴクは、巣の砂の中に潜んでいて獲物が巣に落ちると、すり鉢状の巣の傾斜を這い上がって逃げようとする獲物に頭を捻って砂をすくい上げてぶつけます。
そして、すり鉢を転げ落ちてきた獲物に、左右に大きく開いたキバで噛みつき、砂の中に引きずり込みます。
尚、アリジゴクは、大きなキバで獲物をかみ砕いて食べるのではなく、獲物の体に突き刺したキバを通して体液を吸い取ってしまいます。実は、アリジゴクのキバは中空のストローのようになっていたのです。
また、アリジゴクの大きなキバは、獲物の体液を吸い取るだけでなく、注射器の役目も持っていて、噛みついた獲物が直ぐに死んで動かなくなるように、キバから強力な毒素を注入する機能も持っています。(キバから出る毒素はアリジゴクの胃袋に共生する細菌由来のものと言われています)
アリジゴクは、キバから獲物の養分を吸い尽くすと、獲物の死骸は巣の外に弾き飛ばします。
このため、巣の周囲を、目を凝らして確認すると小さな虫たちの死骸が点在しているのを見ることができます。
このようにして十分に栄養を摂ったアリジゴクは成長して、砂の中に丸い繭(まゆ)をつくり、やがては、繭の中で蛹(さなぎ)になります。さらに数週間後にはウスバカゲロウになって飛び立ちます。
これが一般に、アリジゴクと呼ばれて幼虫時代を過ごすウスバカゲロウですが、実はあのトレードマークのようなすり鉢状の巣で過ごさない種もいたのです。
岸壁にへばりついて獲物を待ち伏せるウスバカゲロウの幼虫
コマダウスバカゲロウという種の幼虫は、薄暗くて垂直な岸壁にいて、獲物を待ち伏せています。
特に、獲物が這い上がってくることが多い、内側にえぐれているような岩肌にへばりついています。そして、獲物が岩肌をよじ登ってきたら、すかさず獲物を捕まえてしまいます。
巣を作らずに砂地に潜んで獲物を待ち伏せるウスバカゲロウの幼虫
このタイプのウスバカゲロウは、広い砂地の砂の中にいて獲物を待ち伏せています。広い砂地ですから、当然日当たりは良いところです。
そして、このウスバカゲロウは、巣を作らないで広い砂地の中に適当に潜り込んで獲物が通りかかるのを待っています。カスリウスバカゲロウやオオウスバカゲロウという種の幼虫が、このような対応をします。
ウスバカゲロウの幼虫の共通点
このようにウスバカゲロウの幼虫は、すり鉢状の巣を作るアリジゴクと呼ばれる幼虫や、ガケの斜面に潜んでいる幼虫、そして、巣を作らないで日の当たる砂地の中にいる幼虫もいますが、共通しているのは何れも獲物を待ち伏せて捕まえるタイプということです。
そして、待ち伏せている場所は、簡単には変えようとしません。そのため、栄養を十分に摂取できないことから、成長にはかなりの時間を費やしています。(蛹になるまで、2~3年もかかるそうです)
たしかに、待ち伏せているだけなら永久に獲物がやってこない場合もありそうですが、一度決めた場所を辛抱強く動かないで待ち続ける態度には、見習うべき点もあります。