夏になって地面が見える神社の敷地などに行くと、セミの幼虫が土の中から出てきたと思われる穴が、あちらこちらにあいています。
セミの幼虫は数年間に亘って地面の中で生活していますが、セミは、土の中ではなく、枯れ木に卵を産卵すると言われています。
しかし、セミはどうして、生木ではなく、枯れ木を選んで産卵するのでしょうか?
セミが枯れ木に産卵する理由
セミは、産卵管を木に突き刺して、ひとつずつ卵を産み付けます。この時、親セミは、枯れ木を選んで産卵します。
その理由は次のようなものです。
木にとっては、産卵管を木に突き刺されるため、穴を開けられてしまいます。
そのため、生木に産み付けられると直ぐにヤニ等を出して穴を補修しようとします。
逆にセミの立場から見ると、そんなことをされると卵は死んでしまうことから、親セミは生木ではなく、枯れた木に産卵をするのです。
枯れ木に産み付けられた卵のその後
枯れ木の穴の中で、卵は翌年の梅雨の頃まで過ごした後、幼虫にふ化します(セミの種類によってふ化の時期は異なります。ふ化の早いニイニイゼミでは産み付けられた年の秋にはふ化してしまいます)。
卵から、ふ化した幼虫は、そのまま小枝から地面に落下します(小さな幼虫は軽いため怪我をしません)。幼虫は地上に落ちると、外敵に見つからないように直ぐに土の中に潜り込みます。
地中にもぐったセミの幼虫は、地面の中で木の根に口を刺して水分を摂って生活します。ところが、根の部分の樹液には、殆ど栄養分が含まれていません。
この樹液は「導管液」と呼ばれるもので、地面から吸い上げた水分で占められています。(そのため栄養価は少ししかありません)
尚、セミの成虫は、空中を飛んだりして活発に行動しますが、葉で作られた糖分を含んだ栄養価の高い「師管液」を吸っています。
普通のセミは地中で数年間(6年程度)も過ごしますが、それは栄養価が少ない導管液を食べているため、成長に時間がかかるからと言われています。
これに対して、幼虫時代に栄養価の高い草の汁を吸っている「クサゼミ」は、1年で成虫になると言われています。
一般的なセミの幼虫が低栄養の導管液を吸って成長する理由
セミの幼虫は、木の根もと付近にある導管液(低栄養)を吸って長い年月をかけて成長しますが、その理由は、
① 低栄養を食べていれば、生存競争が少ないため生きのびるチャンスが高い
② 糖分を多く含んだ師管液を食べると、糖分を多く含んだ排泄物がでるため、住んでいる場所の衛生が保てなくなる
③ 地面の中で生活する幼虫は、運動量が少ないため低栄養の導管液が丁度良い
以上のことなどが、一般的なセミの幼虫が低栄養の導管液を食べている理由と考えられています。
しかし、上記のように多くの説があって、あまり歯切れがよくありません。
実は、セミの幼虫は地中で成長するために、思うように研究が進んでいないのです。
そのため、現状で考えられる様々な説が提唱されているのが実態です。これからも多くの研究者による色々な発見があると思います。
セミの生態には未知の部分が多いことから、余計に興味をそそられます。