毎年、ススキが白い穂をつける頃になると、中秋の名月という言葉が思い浮かびます。

恐らく、多くの日本人にとって、ススキが風にふかれてそよぐ姿と、その向こう側にある月は、日本の原風景だと思います。

今回は、このススキについて紹介します。

ススキが手を切るような葉を持っている理由

細長いススキの葉に触れる場合は、注意しないといけません。

私が子供の頃は、野原で遊び回るだけで、手の甲や手のひらを切っていました。それは、生い茂ったススキをかき分けていたからです。

ススキの葉を拡大して見ると、ノコギリ状のトゲが並んでいます。このトゲはガラスの原料になるケイ酸を含んだ硬いため、葉にちょっと触れるだけで切れます。

実は、ススキのようなイネ科の植物は、草を食べる動物から身を守るために、土の中にあるケイ酸を吸収して体に蓄積していたのです。

これが、ススキが手を切るような葉をしている理由です。

尚、ススキの葉がするどいためか、中国では魔除けの草として扱われていました。

それが日本に伝わって田んぼの農耕儀礼(田んぼに水を取り込む水口祭や、初田植え)として使われるようになりました。ススキは、あっという間に茎をのばして成長することから、ススキの穂を稲穂に見立てることで豊穣祈願に適していました。

ススキは月見団子やイモ等とともに、お盆の上に飾りつけられて、神への豊穣感謝の際に使われていました。

さらに、この頃のススキは儀式用途だけではなく、硬い茎の特徴を生かして、屋根にも使われていました。

かやぶき屋根はとても優れた高級素材!

今では見たこともない人が多いと思いますが、ススキの茎を束ねた「茅葺(かやぶき)屋根」は、大変優れた高級素材でした。

ススキが手に入らない時には、仕方なく稲わらを使った「藁葺(わらぶき)屋根」を用いましたが、「藁葺(わらぶき)屋根」は、「茅葺(かやぶき)屋根」の1/3程の寿命しかなかったと言われています。

一見、ススキの茎よりも稲わらを使った方が、良いのではと思いますが、ススキの茎は現在の建築資材と比べても引けを取らない程、保湿性、通気性、吸音性などで優れたものでした。

しかし、そうは言っても植物ですから、虫に食べられることや、カビが生える等のリスクがあります。

もちろん、現在社会に「茅葺(かやぶき)屋根」を使うのは大変ですが、当時は囲炉裏(いろり)で薪を燃やしていたため、その煙が「茅葺(かやぶき)屋根」をいぶして保護していたようです。

そのため、囲炉裏(いろり)が使われていた時代には「茅葺(かやぶき)屋根」は、最良の部材でした。

このように、昔の日本ではススキは人々の暮らしに無くてはならない程、使われていましたが、日本の火山灰由来の養分の少ない酸性土壌では、ススキが育ちやすい環境が幸いして、どこに行っても豊富にあったからだと思います。

開発が進んでススキがすくなってきたと言われていますが、ススキは日本の代表的な風景だと思います。私は、ススキが有って当たり前の環境が続くことを願っています。