渡り鳥の中には、標高7000m~8000mものヒマラヤの高地を超えていくインドガンやアネハヅルがいますが、標高8000mでは空気中の酸素濃度が通常生活している所の1/3程になってしまうため、人間では酸素マスクなどをつけないと数10m移動するだけでも至難の業になります。

このような過酷な環境(低酸素で、極寒の空気中)のヒマラヤ高地を、飛び越えることのできるインドガンとアネハヅルの秘密を調べてみました。

インドガンの特殊な身体能力

鳥には、呼吸を効率的に行う気嚢(きのう)という器官があります。気嚢は、拡大したり縮小したりして、吸気や呼気の時に、空気を肺の中に送り込んでいます。その時、空気は肺の中で血液とは逆方向に流れる「対抗流性ガス交換」をしています。

「対抗流性ガス交換」をすると、血液は効率的に空気中の酸素を取り込めるため、鳥は、飛ぶような激しい運動ができます。

しかし、気嚢だけでは、ヒマラヤのような高地を飛び越える説明にはなりません。

■インドガンの特別な身体能力

① 飛翔時に使う筋肉内の発達した毛細血管
インドガンは、飛翔筋内の毛細血管が発達していて、血液中のヘモグロビンの酸素結合能力が、低地の鳥に比べて高いことが判っています。そのため、ヒマラヤのような低酸素域でも、効率的に酸素を取り込みながら飛行できます。
② 飛翔時に使う筋肉内に多く含まれるミトコンドリア
ミトコンドリアは、細胞内のエネルギーを作り出す役目を担っているものです。そのため、この数が多い飛翔筋はエネルギーの生成効率が高いため、インドガンの高度飛行に役立っています。

さらに、インドガンは夜間や早朝を選んで高度飛行をしています。

夜間や早朝の時間帯は、空気が冷えていて密度が高くなるために、飛んでいるインドガンを支えるように働く揚力(ようりょく)は高くなります。また、密度が高いと酸素吸入をするにも都合が良いように作用します。

このように、インドガンは優れた身体能力と、高度飛行に適した時間帯を選んで飛行することで、標高7000m~8000mもの高度を飛ぶことができたのです。

アネハヅルはどのようにしてヒマラヤを飛び越えているのでしょうか?

アネハヅルは、インドガンが持っている程の身体能力はありません。そのため、インドガンのように羽ばたくことだけで高空飛行はできませんが、ヒマラヤの斜面には強い上昇気流があります。

アネハヅルは、この上昇気流を上手く捉えることでヒマラヤを超えていました。

アネハヅルは、全長90㎝メートル(体重:2kg程度)の大きさで翼を広げると170~190㎝メートルもありますが、実はツルの中では最小です。

データ検証はされていませんが、アネハヅルの体長は、ヒマラヤの上昇気流に乗るのに適した大きさと考えられています。

つまり、アネハヅルは、過酷な気象条件を熟知して、それを上手く利用できる体を使うことで、ヒマラヤを飛び越えていたのです。