人は、自分の動きを、視覚情報、皮膚感覚、手足の運動位置等を伝える様々な情報等を大きな脳で処理することで得ています。
センサーから来る情報の詳細は判りませんが、大きな脳を持つ人間なら、様々な情報を集めて複雑な処理をしていることは想像できます。
それに比べて小さな昆虫は、微細な脳しか持っていません。人のように複雑な脳の働きは期待できません。
そんな昆虫たちは、どのようにして自分の動きを理解して、目的の場所に行くことができるのでしょうか?
ミツバチが飛んでいる時の方向制御の仕方
ミツバチの飛翔(ひしょう)については、オーストラリアのスリニバサンのグループが独自の方法で研究した結果があります。
オーストラリアの研究グループによるミツバチの実験結果
ミツバチは、狭い通路を飛ぶ時、壁にぶつからないように通路の中心を選んで飛びます。
研究グループは、ミツバチがどうやって通路の中心を飛行するのかを実験で確認することにしました。
実験の結果、ミツバチは、左右の眼が受ける刺激情報量を、いつも同じに保つように、飛ぶ位置を調整しながら飛ぶことで、狭い通路の中心を飛行していることを確認しました。
左右に壁がある時に飛んでいるミツバチの目に入る情報
左右に壁がある所を飛んでいるミツバチの左目には、左側の壁が左後方に移動しているのが見えます。同様にして、ミツバチの右目には、右側の壁が右後方に移動していくのが見えます。
もしも、左側の壁の近くをミツバチが飛んだ場合を想像して下さい。
この時、ミツバチには、左後方に移動する壁の動きは、右目で見ている右後方への壁の動きよりも速く動いているように見えるはずです。
これは、同じ速度でも近くのものは速く見え、遠くのものはゆっくりした動きに見えるためです。
ミツバチは、左右の眼から入る情報(後方に移動する壁の速さ)を比べることで、同じ速さに見えるように、壁との位置を調整しています。このため、ミツバチは壁の中心を飛ぶことができるのです。
このことを実験で証明するために、研究グループは、狭い通路の壁を動かすことのできる装置で行いました。
壁を移動させて行った実験
(1) 左側の壁をミツバチの飛んでいる方向へ動かす。
(2) ミツバチには左側の壁の動きは、右の壁の動きに比べて遅く見えます。
(3) ミツバチは左側の壁が遠くなったように感じて、左側に寄る動きをします。
逆に左側の壁をミツバチが飛んでいるのとは逆向きに動かすと、ミツバチは左側の壁の動きが速く見えるため、左側の壁との距離が近くなってしまったと判断して、右方向に飛び始めます。
この実験結果から、ミツバチは左右の目から入る刺激がいつも同等になる位置をキープするように自分の動きを制御していることが判りました。
まとめ
とても小さな脳しか持っていない昆虫たちは、人とは違う方法で様々なすごい能力を発揮しています。
ミツバチの場合は、飛ぶ姿勢をコントロールするのに、左右の眼で見た速さの違いを刺激の大きさとして受け取り、飛ぶ方向をコントロールしていることを、オーストラリアの研究グループは確認しました。
このような姿勢制御の方法は、昆虫によって違う方法で行っているようですが、人のように大きな脳を持っていない昆虫たちが、人よりも素早い動きをするのには驚きます。
昆虫たちの動きのメカニズムを究明することで、ロボット技術などへの応用は進んでいます。様々な生き物の研究は、人々の生活を便利にしていたのです。研究の進展と技術の進歩は、明るい未来を予感させてくれます。