蚊が少ない夏
今年の夏は、経験をしたことがないほど暑いですが、いやな蚊が少なくて助かりました。以前から蚊が暑さに弱いことは知っていましたが、これ程、蚊が少なくなるとは驚きです。
個人的には、暑い気候のせいで、蚊の活動領域が狭められたことと、蚊の幼虫のボウフラが育つ浅い水たまりが、棲めない環境になってしまったのだと思っています。
そこで、蚊の生態を調べることで、蚊が減少した理由を探ることにしました。
日本にいる主な蚊の生態
日本で多く見かける蚊は、「ヒトスジシマカ」、「アカイエカ」、「チカイエカ」などだそうです。この中で、「ヒトスジシマカ」は屋外で生息する「やぶ蚊」で、「アカイエカ」と「チカイエカ」は、屋内にいる「いえ蚊」です。
蚊の寿命
「ヒトスジシマカ」、「アカイエカ」、「チカイエカ」の寿命は、ボウフラが蚊になってから、30日間ぐらいと言われています。
「やぶ蚊」の「ヒトスジシマカ」は、夏が終わって秋になると死んでしまいますが、晩秋になって生まれた「アカイエカ」は、気温が下がっても、冷えすぎないクローゼットなどの暗い場所で冬眠をして生き延びます。そして春になると直ぐに卵を産みます。
そして、「チカイエカ」は、地下鉄や下水道などで季節を問わず、活動しています。
活動に適した気温
一般的な蚊が、活発に飛び回る温度は、およそ22℃~28℃です。15℃を超えると血を吸って産卵を始めますが、地下鉄などに棲んでいる「チカイエカ」は、10℃以上で血を吸うと言われています。
このように蚊の種類によって適温が違うため、一概には言えませんが、一般的な蚊の場合は、気温が15℃以下になると、動くことをやめてじっとしています。なお、「いえ蚊」の場合は、冬眠もできるため低温には強いでしょう。
しかし、高温側の35℃を超えると、次第に生存が難しくなります。そのため、猛暑日の続く気候では、蚊が少なくなるのでしょう。
ボウフラの生育環境
流れの少ない水面の側壁や、水面などに産み付けられた卵から孵化(ふか)したボウフラは、水中で育ちます。その後、蛹(さなぎ)を経て成虫の蚊になります。
ボウフラは呼吸器が尻尾にあって、尻尾を上にして水面を漂い、水中では身体をクネクネさせて移動します。
ボウフラは、水中の微生物や生物の排泄物などを食べていますが、体が小さいため水流に流されてしまいます。そのため、食べ物を食べやすくて呼吸しやすい、水の流れが少ない所を好みます。
そのため、ボウフラにとって都合の良い環境は、小さな水たまりや空き缶などに水が溜まったような場所です。魚がいるような大きな池などでは天敵が多いため好みません。
ボウフラは、順調に成長すれば、4回脱皮して7日~10日程で、蛹(さなぎ)になります。その後、約3日で成虫の蚊になります。
高低温に強いボウフラ
ボウフラは、水温が5℃以下になると、仮死状態で動かなくなりますが、高温側は40℃ぐらいでも平気で活動しています。
さすがに、50℃以上になると生存できなくなりますが、思っている以上に、水温の変化に強いようです。
猛暑で蚊が少なくなった理由
蚊の生態は、以上のようなものでした。蚊の生態と、猛暑の状況などから、蚊が少なくなった理由を推定すると次のようになります。
- 35℃を超える猛暑日が続いたために、メスの蚊の吸血活動が減った。
- メスの吸血活動が減少して、産卵に必要なたんぱく源の確保が難しくなったため、産卵が減少した。
- 蚊の寿命は約30日間と短い上に、暑い期間が長いことから、蚊の生存数は大幅に減少した。
当初は、猛暑のためにボウフラが棲む水たまりの温度が高温化して、蚊の数が減少したと思いましたが、考えている以上に、ボウフラの耐温度性が強いため、上記のように推定しました。
まとめ
以上のように、今年の夏は、35℃を超える猛暑日が全国的に多かったために、メスの吸血活動が難しくなって産卵数が減少したのでしょう。また、猛暑の期間が長かったことと、蚊の寿命が短いために、次世代の蚊の数が減ってしまいました。そのため短期間に蚊の数は大幅に減少したと推定されます。
ただし、これから秋の季節を迎えて涼しくなると、冷暗所に潜んでいた蚊の活動が活発になります。蚊の数は少ないでしょうが、種を確保するために例年以上に活発化することもあるでしょう。
秋に生まれたボウフラは、冬を越して生きのびるため、ボウフラの成長環境(空き缶、水たまりなど)を減らすことが大切になります。
それにしても、数度の温度上昇が蚊の活動に、これほど影響することに驚かされました。