アネハヅルとは?
アネハヅルは、美しい姿をした体長90㎝程の小さなツルですが、標高8,000メートルを超えるヒマラヤ山脈を越えて、渡りをします。
チベット高原などの繁殖地から越冬のために、インドや中東方面に渡るために「世界の屋根」とも言われるような高度の高い所を飛び越えるのです。
また、アネハヅルは用心深い性質で、天敵を遠方からでも見つけられるような見晴らしの良い草原を好みます。
標高8,000メートルの世界とアネハヅルの能力
アネハヅルが飛び越えるヒマラヤ山脈は、標高8,000メートルを超える世界です。気温は-30℃と低温で、酸素の濃度は地上の1/3と言われています。
鳥は、飛行するために酸素を効率的に肺に送り込むための「気嚢(きのう)」という器官を持っていて、息を吸っている時だけでなく、息を吐くときも、肺に酸素を取り込むことができます。
気嚢は、鳥が空気の薄い上空を飛行するにはなくてはならない気管ですが、気嚢だけでは条件の厳しいヒマラヤ山脈を越えて飛ぶのは難しいでしょう。
アネハヅルの特別な能力
アネハヅルは、酸素濃度が薄い、ヒマラヤ山脈でも大量の酸素を吸入するため、血液中のヘモグロビンを一部進化させて、酸素との結合能力を高めています。
アネハヅルを進化さえたヒマラヤ山脈
ヒマラヤ山脈は、大陸プレートの移動で陸地同士がぶつかって地面が隆起したと考えられています。
地面の隆起は2,000万年前から始まって年代を経て出来たものと推定されますが、アネハヅルの渡りの歴史は、隆起する前から行われていたため隆起の高さとともにアネハヅルの体も進化していったと考えられています。
上昇気流でヒマラヤ山脈を飛び越えるアネハヅル
アネハヅルが、標高8,000メートルを超える飛行を実現するには、もう一つの重要なファクターがあります。
ヒマラヤ山脈は、2,400kmの広大な地域ですが、アネハヅルが好んで飛び越える「カリガンダギ渓谷」という場所があります。「カリガンダギ渓谷」は、チベットとインドを結ぶ交易路として繁栄した歴史がありますが、風が吹きすさぶことで有名なところです。
アネハヅルは、強風の上昇気流を上手く捉えることが出来るのでしょう。山岳民族によって、上昇気流に乗った一団のアネハヅルが一気に舞い上がって行く様子が目撃されています。
まとめ
美しい姿と小さな体をしたアネハヅルが、標高8,000メートルを超えるヒマラヤ山脈を越えて渡りをする秘密は、次の2つの能力でした。
「大量の酸素を吸入するために、酸素との結合能力を高める進化」と「上昇気流を上手にとらえて一気に上空に舞い上がる技術」を持っていたからでしょう。