アリジゴクの巣では、どうやって獲物を捕獲しているのでしょう。

アリジゴク 昆虫・虫
アリジゴク

アリジゴクと言われる巣は、ウスバカゲロウの幼虫が作った獲物をとるための罠です。記事では、アリジゴクの形状や、巣(罠)の中に辛抱強く潜んで獲物を待つ様子、獲物の捕獲方法などについて紹介しています。恐ろしいアリジゴクの世界に、入り込めます。

アリジゴクを作るカゲロウとはどんな昆虫なの?

アリジゴクの巣を作るカゲロウは、完全変態の昆虫です。成虫になるとウスバカゲロウになります。ウスバカゲロウは4枚の透き通った翅(はね)をしたトンボに似ている昆虫です。

ウスバカゲロウは、アミメカゲロウ目のウスバカゲロウ科に属しているため、成虫の寿命は短命と思われています。ところがウスバカゲロウの寿命は、数日間ではなくて、1ヶ月程度でもあります。

日本で生息するウスバカゲロウは、17種生息しています。17種の中で、幼虫がアリジゴクと呼ばれるすり鉢のような巣を作る種は5種類です。

以下、アリジゴクは、ウスバカゲロウとして紹介していきます。

アリジゴクを作るウスバカゲロウの幼虫

ウスバカゲロウの幼虫は、アリジゴクと言われる罠(巣)を作って獲物を待ちます。

ウスバカゲロウの幼虫の体形は、数mmから1.5㎝程のふっくらとした楕円形です。体全体が土色で、頭の先端にはカギのように左右に開く大きなあごがあります。

そのため、ダンゴムシのような親しみやすさはなく、一見して恐ろしい姿です。

アリジゴクという最強の罠

アリジゴクと言われる巣は、獲物が滑り落ちるように、細かくてさらさらした土で作られています。形状は中央部を下にした、すり鉢状の形で、上部の直径は数㎝(3㎝〜8㎝程度)程です。

アリジゴクは、乾いたさらさらの土で作られていいるため、大抵は、雨をよけられる民家の軒先等に作られます。

ウスバカゲロウの幼虫は、土を掘ってあごで土を外に放り投げて、すり鉢を作ります。このようにすると、中心部には軽くて細かい土が残り、周囲は粒の荒い土になります。

この罠が完成すると、幼虫は、すり鉢状の土の中に体を隠して、獲物を待ちます。

罠に獲物が落ちた時のウスバカゲロウの行動

すり鉢状の罠にアリ等の小さな昆虫が一歩足を踏み入れると、滑って中心部に落ちます。獲物は必死になってすり鉢を駆け上がろうとしますが、さらさらした土のため、簡単にかけ上がることができません。

この時、土の振動を感知したウスバカゲロウの幼虫は、逃げようとする獲物に土を飛ばして逃走を妨害します。

そして、ウスバカゲロウの幼虫は、大きなあごで、獲物を土の中に引き込み体液を吸い取ります。体液を吸い取られて、殆ど皮だけになった獲物は、巣の周辺に放り投げられて廃棄されます。

アリジゴクの巣の周囲には、体液を吸い取られて、干からびた昆虫の死骸が散乱しています。

《アリジゴクの凄いところ》
アリジゴクのすごい所は、次のような点です。

  • 自分(幼虫)は安全な土の中で獲物をじっとして待つため、究極な省エネを実現しています。
  • 獲物が来たら自分の姿を見せないで、土の中に引き込んで獲物をしとめるため、究極の低リスク戦法です。

獲物が罠にはまるのを辛抱強く待たなければなりませんが、リスクを最小限にした最強の罠でしょう。

まとめ

アリジゴクを作るのは、ウスバカゲロウという昆虫の幼虫です。

ウスバカゲロウの幼虫は、乾いた、さらさらの土のある家の軒下などにすり鉢状の巣(罠)を作ります。幼虫は、その中に潜んで獲物が落ちてくるのを待っています。

すり鉢状の罠の優れた点は、安全な土の中でエネルギーを使わずに、獲物を待ちます。そのため、究極の低リスク・省エネ戦法です。

ただし、夏の終わり頃、大雨のため実家の裏の軒先にあったアリジゴクの巣は、完全に水没して跡形もなくなりました。

ところが、数ヶ月後には、新しいすり鉢ができていました。恐らく、水没したアリジゴク(ウスバカゲロウの幼虫)とは、違う個体でしょう。冬には、アリジゴクのすり鉢は増えていました。

目立たない昆虫ですが、雨戸を閉める時にふと目にして、すり鉢を見ると、何故か勇気が湧いてきました。アリジゴクの巣の中で、ウスバカゲロウの幼虫は、たった一匹で孤独と戦っているからでしょうか?

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