閉鎖花の多くは、ツボミのままで実を付ける不思議な花です。自家受粉する機構を持っていて、ポリネータ(小さな虫等)が、同種の他の花粉を運んできてくれなかった場合の備えとしての役割をしていました。閉鎖花は、自家受粉のため、正常に生長しないリスクを伴います。
▼目次
自家授粉で子孫を増やす花
花々は競って綺麗(きれい)な花を咲かせてくれますが、植物たちが花を咲かせるのは、人のためではありません。
植物は、花粉を運んで受粉をしてくれるポリネータ(小さな虫等)をおびき寄せるために花を咲かせています。
多くの生物は近親間の交配では正常な子孫を残しにくいのですが、小さな虫たちが他の花の花粉を持って来てくれなければ受粉できません。
動くことの出来ない植物にとっては、子孫を残せなくなるかもしれません。大問題です。
そんなリスクを解消する手段として、自家受粉で子孫を増やすことのできる閉鎖花(へいさか)という不思議な花が存在しました。
閉鎖花の役割
野に咲く、小さなスミレの花を見つけると、こんな所に健気(けなげ)に咲いてくれて有難うと、思わず、声に出して叫びたくなるほど感動することがあります。
スミレは、ポリネータのマルハナバチなどが来てくれるように精いっぱい可憐な花を咲かせますが、マルハナバチが飛んで来てくれる保障はなく、来てくれたマルハナバチがスミレの花粉を付着させていないことだってあります。
そんな場合に備えて、スミレ等は自家受粉(じかじゅふん)で子孫を繁栄させようとします。開花したスミレの花の周辺を詳しく観察すると、これから花になるような蕾(つぼみ)があります。これは、花を咲かせることのない「閉鎖花(へいさか)」でしょう。
閉鎖花とは、自家受粉で子孫を残すことのできるシステムを持っている花です。スミレ等は、可憐な花を咲かせた後に、次々に閉鎖花をつけて子孫を残す準備をしています。
もちろん、動物と同じように、自家受粉は正常な子孫を作れないというリスクはありますが、ポリネータたちによって他の花粉を運んでもらえない場合に備えて、何が何でも受粉できるシステムを作っているのでしょう。
日本の閉鎖花は、19種ほどあって、ほとんどツボミの状態で実をつけます。閉鎖花の役割は、確実に子孫(種)を残すことでした。
閉鎖花の構造
閉鎖花は開花しないで、蕾(つぼみ)のままで、実を付けます。
閉鎖花の内側を覗(のぞ)いてみると、普通の花になるための準備をしているように見えますが、大きく違っているのは、おしべの葯(やく)が、めしべの柱頭(ちゅうとう)と構造的に接触していることです。これなら確実に受粉して種子を作ることができます。
普通の花は、自分の花粉で受粉しないように、おしべの葯とめしべの柱頭は離れているか、場合によっては時期をずらして成長します。
自分の花粉を受粉して種をつくる繁殖(はんしょく)方法は、専門用語で言うと「自殖(じしょく)」と呼ばれています。
花を開かない閉鎖花のメリット
花を開かない花(閉鎖花)は、人からみると可哀想に感じられますが、植物にとってはメリットがあります。
- 多くの花粉を準備しなくて済みます.
- 蜜を出さなくて済みます
- 花弁(はなびら)を作らなくて済みます
つまり、閉鎖花は低エネルギーで、子孫の種子を作ることができる効率の良いシステムでした。
ポイントのまとめ
閉鎖花は、自家受粉する機構を持っていて、昆虫が、同種の他の花粉を運んできてくれなかった場合の備えとしての役割を担っていました。
閉鎖花は、自家受粉のため、正常に生長しないリスクを伴いますが、子孫を残せなくなることよりも良い選択なのでしょう。
閉鎖花の代表的なものには、スミレやホトケノザ、ツリフネソウなどがあります。