小さな昆虫たちが巨大化しない理由

スズメバチ

スズメバチ

多くの昆虫は、小さいけれど力持ちで、空も飛べるし、硬い体を持っています。昆虫たちが人と同じ大きさになったら、モンスターでしょう。昆虫は地球上に最も多くの種がいると言われていますが、皆、小さいままです。何故、巨大化しないのでしょうか? この記事では納得できる理由を、分かりやすく紹介しています。

▼目次

    1. 昆虫が大きかったらモンスターと呼ばれた
    2. 昆虫の硬いからだと成長の関係
    3. 昆虫の脱皮に伴う問題点
    4. ・脱皮のリスク
    5. ポイントのまとめ

昆虫が大きかったらモンスターと呼ばれた

昆虫は、小さな体でも、大きくて重いものを運べる、飛ぶことが出来る、素早い動きができる等、様々な優れた能力を持っています。

もしも昆虫が人間と同じくらいの大きさになったら、きっとスーパーマン、いやモンスターと呼ばれたでしょう。

しかし現実には、昆虫は小さなものばかりです。化石で確認されたトンボで、最も大きなものは、翅(はね)を含めて70㎝もあったようですが、現在のトンボで最大のものは、17㎝ぐらいです。(どうやら巨大化は選ばなかったようです)

古代のトンボは、確かに大きいですが、小さな昆虫たちの世界だからビッグサイズと感じるのでしょう。

では、優れた能力を持っている昆虫たちは、何故、もっと大きくなれないのでしょうか?

昆虫の硬いからだと成長の関係

カブトムシを連想して下さい。カブトムシは、鎧(よろい)のような硬い外骨格でおおわれています。子供たちは、この硬さに安心感をいだき、カブトムシにヒーローのような憧れを持ちます。

カブトムシほどの硬さはなくても、他の昆虫たちも、鎧(よろい)を身にまとっています。昆虫たちの硬い鎧(よろい)のような外骨格は、「クチクラ」と呼ばれるもので、昆虫の表皮から出てきた分泌物が固まったものです。

このクチクラは、外敵から身を守る大切な役目をしますが、一度固まると硬くて伸びません。昆虫が成長して体のサイズを大きくするには、硬い鎧(よろい)を脱皮しなければなりません。

昆虫の脱皮に伴う問題点

セミの脱皮

セミの脱皮

昆虫は、硬い外骨格におおわれていて、成長するには、鎧(よろい)を脱ぎ捨てなければなりません。それなら、脱皮を繰り返して、どんどん大きくなればいいでしょうが、脱皮をするのは、昆虫たちにとっては命がけだったのです。

・脱皮のリスク

脱皮をするには、鎧(よろい)を脱ぐのですから、そんな時に外敵におそわれたら大変です。しかも、脱皮をした後の新しい鎧(よろい)は、しばらくの間は柔らかくて役目をはたしません。

新しい鎧(よろい)が固まるまでの時間は、体が大きい程、長時間かかります。そして、体が大きいと別の問題も発生します。

昆虫は、骨がないので、鎧(よろい)のような外骨格で体を支えています。大きなカマキリが脱皮をする時には、重力で垂れ下がる重い体を保持するため、何かにぶら下がって体を支えながら脱皮をしなければなりません。

その点、水中にいるザリガニ等は、水の浮力に助けられています。

昆虫たちの脱皮を難しくしているものには、もう一つ原因があります。
それは、昆虫が持っている、気管(きかん)と呼ばれる呼吸器官の存在です。

昆虫には人のような肺はありません。古生代の酸素濃度は、現在よりも高くて30%〜35%もあったと言われています。そのため、昆虫も気管呼吸ができて巨大化したと考えられています。

現在の地球の酸素濃度は低いため、空気(酸素)は、昆虫の胴体横などにある気門(きもん)という孔から取り込まれて、気管という小さな管を通じて全身に運ばれています。昆虫には鼻の孔はなくて、体の横にある気門から空気を取り込みます。

気管の表面は、例の鎧(よろい)で覆(おお)われていて、体のサイズが大きくなれば気管の長さも増してしまいます。

つまり、脱皮では気管の微細な管も脱ぎ捨てるため、困難さは増大します。

ポイントのまとめ

小さな昆虫たちが、大きくなるよりも現状のサイズを選んだ要因は、他にも様々なものがあると思いますが、「脱皮にともなう制約説」には、説得力があります。

もう一度まとめると、

昆虫たちは、外骨格という硬い鎧(よろい)で体を支え、そして外敵の攻撃から身を守っています。

鎧(よろい)は、硬くて伸びないため、成長時には脱ぎ捨てて新しいものと交換しなければなりませんが、脱皮には、無防備状態や、生存に不可欠な呼吸系統の管の交換等の複雑な作業が伴います。

硬い鎧(よろい)を身にまとうことを選んだ昆虫たちは、少しでも脱皮の時間を少なくしてリスクを減らすために、体の大きさを小さい状態に維持せざるを得なかったのでしょう。