アリジゴクと言われる巣は、ウスバカゲロウの幼虫が作っています。この記事では、巣の中に辛抱強く潜んで獲物を待つ様子や、獲物の捕獲方法などについて紹介しています。
▼目次
1.アリジゴクを作るカゲロウとはどんな昆虫なの?
アリジゴクを作るカゲロウは、完全変態をして、成虫になると「ウスバカゲロウ」になります。「ウスバカゲロウ」は4枚の透き通った翅(はね)をしたトンボに似ている昆虫です。
「ウスバカゲロウ」はアミメカゲロウ目、ウスバカゲロウ科に属しているため、成虫の寿命は数日間と思われていますが「ウスバカゲロウ」は1ヶ月程度です。
日本で生息するウスバカゲロウ(17種)の中でも、幼虫がアリジゴクと呼ばれるすり鉢のような巣を作る種は5種類に分類されています。以下、ウスバカゲロウを代表にして紹介していきます。
2.アリジゴクを作るウスバカゲロウの幼虫
ウスバカゲロウの幼虫は、アリジゴクと言われる罠(巣)を作って獲物を待ちます。
「ウスバカゲロウ」の幼虫は、数mmから1.5㎝程のふっくらとした楕円形をしていますが、体全体が土色で、頭の先端にはカギのように左右に開く大きなあごを持っていてダンゴムシのような親しみやすさはありません。恐ろしい姿をしています。
3.アリジゴクという最強の罠
アリジゴクという罠(わな)は、細かくてさらさらした土で作られています。形状は中央部を下にした「すり鉢状」の形で、上部の直径は数㎝(3㎝〜8㎝程度)です。
最近はあまり見なくなりましたが、アリ地獄は乾いたさらさらの土がある民家の軒先等に作られます。
ウスバカゲロウの幼虫は、土を掘ってあごで土を外に放り投げて「すり鉢」を作ります。こうすると、中心部には軽くて細かい土が残り、周囲は粒の荒い土になります。
この罠(巣)が出来上がると、幼虫は巣の中にもぐって獲物がくるのを待ちます。
このすり鉢状の罠にアリ等の小さな昆虫が一歩足を踏み入れると、滑って中心部に落ちます。獲物は必死になってすり鉢を駆け上がろうとしますが、さらさらした土のため、簡単に上がることができません。
土の振動を感知した「ウスバカゲロウ」の幼虫は、大きなあごで獲物を土の中に引き込み体液を吸い取ります。
尚、すり鉢状の罠に落ちた獲物は逃げ出すこともできますが、「ウスバカゲロウ」の幼虫は、あごで土を飛ばして逃走を妨害します。
尚、アリジゴクという名前がありますが、小さな虫なら何でも食べます。むしろ、アリよりも栄養のある虫の方が良いようです。
《アリジゴクの凄いところ》
アリジゴクという罠のすごい所は、次のような点です。
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- 自分(幼虫)は安全な土の中で獲物を待つため、究極な省エネ。
- 獲物が来たら自分の姿をさらさないで、土の中に引き込んでしとめる。
獲物が罠にはまるのを辛抱強く待たなければなりませんが、リスクを最小限にした最強の罠でしょう。
4.ポイントのまとめ
アリジゴクを作るのは、ウスバカゲロウという昆虫の幼虫でした。
ウスバカゲロウの幼虫は、乾いた土のある家の軒下などにすり鉢状の巣(罠)を作って、その中に潜んで獲物が落ちてくるのを待っています。
このすり鉢状の罠(アリジゴク)の優れた点は、安全な土の中でエネルギーを使わないようにして獲物を待つため、究極の省エネ戦法という点と、罠にかかった獲物を土の中に引きずり込むため、戦って怪我をするリスクが少ないことでしょう。
ただし、昨年の夏の終わり頃、大雨のため実家の裏の軒先にあったアリジゴクの巣は、完全に水没して跡形もなくなっていました。
ところが、数ヶ月後には、新しいすり鉢ができていました。水没したアリジゴク(ウスバカゲロウの幼虫)とは、違う個体でしょう。今年の冬には、さらにすり鉢は増えていました。
目立たない昆虫ですが、雨戸を閉める時にふと目にする「すり鉢」に、勇気をもらいました。