マメ科の花は、チョウが羽根を広げた形の蝶形花(チョウケイカ)です。花には、受粉をするポリネータを呼び込む工夫がありますが、同じマメ科の植物のエンドウは、ポリネータを拒絶して自家授粉を選びました。何故なのか、この記事では理由を紹介しています。
▼目次
ポリネータを呼び込むマメ科の花の工夫
マメ科の花は、まるでチョウが羽根を広げたような複雑で美しい形をしています。その形から「蝶形花(チョウケイカ)」と呼ばれています。
実は、この「蝶形花(チョウケイカ)」には、受粉をしてくれる昆虫(ポリネータ)を呼び込む工夫があります。
・蝶形花(チョウケイカ)の特別な構造
蝶形花(チョウケイカ)の上部には大きな2枚の旗弁(きべん)と呼ばれる花びらがあります。旗弁(きべん)は、受粉のためにやってくるハチ(ポリネータ)の目印です。
花の下側には、舟の形の舟弁(しゅうべん)と呼ばれる花びらがあって、花にやって来たハチが、蜜を吸うために舟弁に足をのせるとハチの重みで舟弁が下がる構造です。
舟弁が下がると、花の側面にある側弁(そくべん)と呼ばれる花びらによって、ハチは誘導されるようにして花の奥に入っていき、受粉に貢献する仕組みです。
ポリネータを拒絶するエンドウの花
エンドウの花は、マメ科ですから、当然、蝶形花(チョウケイカ)です。
エンドウの花にも、ハチ(ポリネータ)の目印になる大きな2枚の旗弁(きべん)や、花の下部の舟弁(しゅうべん)もありますが、例えハチが来て、舟弁(しゅうべん)にのっても舟弁は下がりません。
つまり、エンドウはポリネータの虫を拒んでいます。
ポリネータたちが送粉するおかげで、植物は同種の他の個体と交配して、タイプの異なる子孫を残すことができるのですが、エンドウはそれを拒んで自家受粉を選びました。何故、エンドウはポリネータを拒んだのでしょう。
自家受粉を選んだエンドウの特殊な事情
自然界では、たえず環境条件が変化するため、様々な環境に適応した子孫を作って生き残りを図ろうとします。そのため、ポリネータによる送粉は必須です。
ところが、エンドウは人によって品種改良が進められた植物のため、人に守られています。自然環境に適応するよりも、人が望む性質を子孫に伝える道を選んだ方が得策なのでしょう。
このような事情のため、エンドウは、ポリネータを拒んで自家受粉を選んだと考えられています。
マメ科では、エンドウと同様に自家受粉をする「スイートピー」があります。「スイートピー」もエンドウと同様、人によって改良が進められた植物です。
このような事例をみると、植物たちは小さなこだわりに縛られないで、貪欲に生き残る方法を選んでいるようです。これが、植物の強い生命力なのでしょう。
ポイントのまとめ
マメ科の花は、チョウが羽根を広げたような複雑で美しい形の蝶形花(チョウケイカ)と呼ばれる花です。蝶形花には、受粉をしてくれるポリネータを呼び込む工夫がありますが、同じマメ科の植物でも、エンドウはポリネータを拒絶して自家授粉することを選びました。
エンドウは、人によって品種改良が進められた植物で、人に守られて栽培されています。自然環境に適応するよりも、人が望む性質を子孫に伝える道を選んだ方が、安定して子孫を残せます。
エンドウがポリネータを拒んで自家受粉の道を選んだのは、以上のような理由なのでしょう。