昆虫から学んだ応用技術|昆虫ミメティクスを活用した空調設備

蟻塚

蟻塚

昆虫が持っている優れた機能や形には、人間の技術が及ばないものが多々あります。そこで、昆虫をまねして、工学や医療分野などに応用する「昆虫ミメティクス」が盛んに行われています。この記事では、シロアリの蟻塚をまねた空調設備の例を紹介しています。

▼目次

  1. 昆虫から学ぶ応用技術
  2. ・昆虫ミメティクス
  3. 蟻塚をモデルにした自然冷却工法のショッピングセンター
  4. ・サバンナの気候
  5. ・・蟻塚の工夫
  6. ポイントのまとめ

昆虫から学ぶ応用技術

生物が長い進化の過程で形づくってきた形態や機能は、自然にマッチしていて、しかも生き延びるための工夫が集結しています。

・昆虫ミメティクス

バイオミメティクスは、生物が持っている優れた機能や形をまねしてそれを、工学や医療分野などに応用することですが、これを、昆虫に特化して表現したものが昆虫ミメティクスです。
昔から昆虫は、多くの民族の食用に供され、絹やハチミツを提供したりする益虫として人々に愛されてきました。バイオミメティクスという観点で昆虫をみると単に資源として役立つというだけではなくて、昆虫の形態や機能には優れていて学ぶべき点が数々あることが判ってきました。

昆虫ミメティクスとして活用すれば、人類の生活に役立つとともに地球環境の保全維持にも寄与します。研究も盛んですが、既に実現しているものもあります。この中から気になるものを紹介していきます。

蟻塚をモデルにした自然冷却工法のショッピングセンター

快適空間

快適空間

アフリカにあるジンバブエ共和国のハラレ市は、標高1600mのため、夏でも平均気温は20℃と少し涼しいところですが、ここに蟻塚をまねして作られた自然冷却工法で建てられたイーストゲートショッピングセンターがあります。

なお、この蟻塚は、アリではなくて、ゴキブリの仲間のシロアリによって作られた塚ですが、蟻塚と記載しています。

イーストゲートショッピングセンターは、1996年にオープンした9階建ての建物ですが、エアコンなどの人工的な設備なしで年中快適に過ごせる換気を実現しています。これと同規模の建物と比較すると、換気・冷房にかかるエネルギーを90%程度削減したと言われています。
この建物のモデルになったのは、アフリカのサバンナにいる「オオキノコシロアリ」の一種です。シロアリの蟻塚は、地上10mにもなる大きなものですが、シロアリたちが土を唾液で固めて少しずつ作ったものです。
シロアリは薄い表皮のため、気温や湿度の変化にはとても敏感な生き物です。

・サバンナの気候

サバンナの気候は激しくて、夏の昼間は45℃にもなりますが、冬の夜間は0℃になります。

蟻塚の外は、こんなにも激しい気候ですが、巣の中は常に30℃程度に保たれています。また、巣の中にはシロアリ達が食料として栽培しているキノコ菌から二酸化炭素が排出されていて、巣の数百万匹ものシロアリも呼吸しています。それでも巣の中は、常に新鮮な空気が流れています。

 

・・蟻塚の工夫

蟻塚を詳しく見ると、塚の表面には無数の穴があって、巣の内部のトンネルにつながっています。このトンネルは煙突効果で換気口の役目を担っています。

    • 蟻塚(泥)の目に見えないような小さな隙間は、断熱効果や湿度調節機能を果たしていた。
    • キノコ菌が発酵する時の熱は、塚内温度を上げていた。
    • シロアリが湿った土を上部に運ぶため、水分が蒸発する気化熱で、塚内の温度を下げる効果も果たしていた。

シロアリの蟻塚は、このような効果が重なって、いつも快適な雰囲気に保っていました。

ポイントのまとめ

昆虫が持っている優れた機能や形をまねして、工学や医療分野などに応用することを昆虫ミメティクスと呼んでいます。

既に、昆虫ミメティクスは様々な形で、人々の暮らしの中で役立っています。その中の「蟻塚をモデルにした自然冷却工法のショッピングセンター」の例は、シロアリの蟻塚をまねて、作られたものです。

サバンナの激しい気候でも、この自然冷却工法のショッピングセンターでは、換気や冷房にかかるエネルギーを90%程度削減したと言われています。

なお、シロアリは、アリではなくて、ゴキブリの仲間ですが、蟻塚と記載しています。