ウソという名前の小鳥は、江戸時代から「鷽替(うそがえ)の神事」に選ばれて、「除災招福」に使われてきました。ウソという名前からだけでなく、おっとりとした仕草や、口笛のような声質を聞いて、とても可愛い小鳥だと感じたことも影響しているのでしょう。
▼目次
ウソという小鳥
ウソは、スズメよりも少しだけ大きくて、暑さに弱い小鳥です。ヨーロッパの温帯から亜寒帯地域に広く分布しています。日本では涼しい2000メートル以上の亜高山帯の針葉樹木に生息していますが、冬になると低山に降りてくるので見ることもできます。
目立つのが嫌で、とっつきにくい性格ですが、おとなしくて、おっとりしていて、テリトリーに別のウソが入ってきても、攻撃を仕掛けることなどはしない温和な性格の愛すべき小鳥です。
そんな「ウソ」という小鳥の名前が気になって調べてみました。
ウソという小鳥の特徴と生態
ウソのオスは、くちばしの周りから後頭部、翼と尾は黒ですが、頬から喉元は紅色、背中は濃灰色、腹部は灰色、腰からお尻の羽色は白色と、とてもカラフルな小鳥です。
ただし、メスはベージュ色で、比較すると地味です。
日本のウソは、亜高山針葉樹林や北海道のカラマツ林で繁殖して、冬になると全国の平地や林で見ることができます。
・ウソの卵と巣立ち
ウソは、細い枝などを集めて、葉でおおわれた見えにくいところに巣を作ります。巣には、苔(こけ)や地衣類などを敷いて、薄青色で赤茶の斑点が入っている卵を、4〜6個産みます。約2週間抱卵すると、ヒナが出て来て、親鳥が運んでくれた種子や昆虫を食べて成長します。
ヒナの巣立ちは、羽化後2週間程ですが、巣立ちの時には2~3羽ずつでグループになって飛び立ちます。
・ウソの食べ物と鳴き声
ウソのエサは、針葉樹や広葉樹のタネ、果樹の芽です。数羽で飛来して枝にとまって芽や実をついばみます。
ウソは、オスだけでなく、メスも鳴く珍しい鳥です。
鳴き声は、フィヨフィヨ、フィーフィーなどと口笛を吹くように、少しもの悲しく、綺麗で、響き渡る声を出します。
ウソという名前の由来
鎌倉時代には、既にウソと呼ばれていました。漢字では、「鷽」または、「嘯(うそぶく)」と記載します。当時の意味では、「嘯(うそぶく)」は、「口笛を吹く」ことを現しています。
つまり、「口笛を吹くようにさえずる鳥」という意味で、「ウソ」と呼ばれるようになったのでしょう。
江戸時代から始まった鷽替の神事とは?
いつの時代もそうですが、「不運なことが続くと、早くこの状態を終わらせて平穏な日々の生活に戻りたい」と願います。
「鷽替(うそがえ)の神事」は、そんな人々の願いから生まれたもので、江戸時代の太宰府天満宮で始まりました。
「鷽替(うそがえ)の神事」は、旧暦の正月(7日)に参詣者たちによって行われた行事が始まりとされています。
「鷽替(うそがえ)の神事」とは、鳥のウソを模して掘った木片を持ち寄って、お互いに、こっそりと交換することでした。そうすることで、「ウソを替える」ことになって、「除災招福」を願ったのです。
ウソという小鳥が「鷽替(うそがえ)の神事」に選ばれた理由は、「不運なこと」や「間違ってしまったこと」などを「なかったことにしてもらう」、つまり「ウソということにしてもらう」という願いからきています。そのため、「ウソ」と呼ばれる小鳥が使われたのでしょう。
ポイントのまとめ
ウソという名前は、鳥の鳴き声が口笛のような響きを持っていたため、「口笛を吹く」=「嘯(うそぶく)」から転じて「ウソ」と呼ばれるようになりました。
また、ウソという鳥は江戸時代から「除災招福」にも使われて大切に扱われていました。ウソが「鷽替(うそがえ)の神事」に選ばれたのは、名前からだけでなく、おっとりとした仕草や、口笛のような声質を聞いて、とても可愛い小鳥だと感じたことも影響しているのでしょう。