働きアリは、餌を探してあちこち歩き回っても、餌を見つけると迷うことなく巣に持ち帰ることが出来ます。アリの匂い検知能力だけでは説明が難しいため、「太陽コンパスによる方向認知」+「経路積算の能力」の2つの能力を持っているものと推測されています。
なぜ、アリは一直線に巣に戻れるの?
アリが一直線に巣に戻れる理由は、「太陽コンパスによる方向認知」+「経路積算」という能力が備わっているためと言われています。
不思議な、アリの方向認知能力
働きアリは、餌を探してあちこち歩き回っても、見つけた餌を迷うことなく巣に持ち帰ることが出来ます。
以前、本ブログでも、このようなアリの能力について、道標(みちしるべ)として使う「匂い物質」で説明したことがありますが、アリは匂いを触覚に触れることで検知して行動します。
アリは、餌を探して右に左に行ったり来たりした後で、その匂いに頼るだけで、巣に戻ることができるのでしょうか?
疑問は残ります。
実は、アリが、一直線に巣に戻る方法は、まだ解明されていませんが、アリには、「太陽コンパスによる方向認知」+「経路積算」という能力が備わっているためと推測されています。
太陽コンパスとは?
これは、太陽の方向を基準にして定位方向を決めるものです。
太陽光は大気の分子にぶつかって散乱します。散乱した光は部分的に偏光するので、天空には偏光パターンが形成されています。
この偏光パターンは、太陽光が雲等によってさえぎられても、存在しています。
アリの複眼は、偏光フィルターの特性を持っているため、偏光パターンを確認できます。そのため、アリは常に進んでいる方向を認識できると言われています。
このことは、スイスの科学者がアリを使った実験(1911年)で、既に証明されていました。この実験では、意図的に太陽の位置を変えると、アリが定位方向を変更することが確認されているからです。
尚、太陽コンパスを利用している昆虫は、アリ以外にも様々な昆虫で確認されています。
但し、太陽コンパスだけでは、アリが的確な位置情報を認識して活用することはできません。出発した地点に直線的に戻るためには、「経路積算」という能力も必要です。
経路積算とは?
「経路積算」でスタート地点に戻る方法は、既にダーウィンによって19世紀には提唱されていました。(現在まで、様々な動物や昆虫で研究されています)
「経路積算」は、現在の居場所と、スタートした場所の位置関係を常に把握するものです。進んだ方向と距離を確認しながら足していくことで、スタート地点を認識しています。(脊椎動物では、脳の海馬と、その周辺皮質が、これらの情報処理に深く関わっていることが判っています)
この「経路積算」能力は、ミツバチ、カメムシで確認されていて、サバクアリというアリでも判っています。
このようなことから
アリには「経路積算」能力があって、「太陽コンパス」で進んだ方向をモニターできるため、餌を見つけた時に、巣に向かって一直線に戻ることができると考えられています。
まだ確認できていない部分もありますが、今後の研究で明確化されるでしょう。
ポイントのまとめ
働きアリは、餌を探してあちこち歩き回っても、餌を見つけると迷うことなく巣に持ち帰れます。
これを実現するには、匂いに頼るだけでは不可能で、次のような能力で実現していると推測されています。
アリが、一直線に巣に戻れるのは、まだ、確認不足のため断定されていませんが、「太陽コンパスによる方向認知」+「経路積算」の2つの能力を持っていることだと推測されています。