渡り鳥の多くは、繁殖の時期に北に、厳寒期には南に旅立ちます。その距離は、数千キロにもおよびますが、まだどのようにして正確な方向が分かるのかは究明されていません。この記事では、古くから言われてきた、代表的な学説のポイントを紹介しています。
1.渡り鳥の行先の見分け方(代表的な3つの説)
白鳥を代表とする渡り鳥の多くは、地球を南北に移動します。そしてその移動距離は、数千キロにもおよびます。このような、はるかかなたをどのようにして認識して移動できるのでしょうか。
鳥がどうやって渡りの経路を認識しているのかは、まだ正確には解明されていません。しかし、古くから多くの学者によって数々の学説がとなえられています。
今回は、「太陽説」や「星空説」、「地磁気感応説」を代表例として紹介しますが、いずれも古い時代から考えられもので、先駆者達が当時の知見で予測したものです。
1-1.太陽説
クラマー(1950年)は6ヶ所に穴をあけた「かご」に渡り鳥を入れて実験したところ、渡りの時期になると特定の方向を向くことを確認した。
マシウス(1951年)は、屋外でハトやカモを放すと晴天の日には特定の方向に飛び去ったが、太陽が見えない曇天の日には方向が定まらなかった。
このことは、クラマー説を実証したものであると、マシウスは主張。これが、太陽説と言われているものです。
1-2.星空説
ザウエル(1955年)が最初に提唱したもので、星の位置で方角を確認して渡りをするという星空説です。
エムレン(1975年)は、プラネタリウムに鳥を入れて観察し、星座が渡りの方向を定めていることを確かめたと言われています。
鳥類は暗くなると目が見えなくなると言われていますが、それは間違いで見えにくくなるだけです。ちなみに、白鳥やカモなどは、星明かりを捉えているとは言えませんが、夜間にも長距離を移動しています。
1-3.地磁気感応説
ミッデンドルフ(1855年)によって最初に唱えられた説で、渡りの経路が北シベリアのタイミール半島に渡の経路が集まっているため、渡り鳥は地磁気の影響を受けて北に移動するという内容です。
20世紀半ばになって科学的な実験が行われていますが、磁場によって強弱のある磁力をどのようにして感じ取っているのか、また、そのような器官が鳥の体のどこにあるのか等の根本的な疑問は残ったままです。
2.まとめ
頭脳の優れた人間が、直ぐに道に迷ってしまうのに、渡り鳥が、数千キロも離れた故郷の方向を認識して移動できるのは不思議です。
謎解きの面白さもあって、古くから、多くの学者たちによって推測されてきました。今回紹介した説以外にも「遺伝的方向説」や「地理的座標説」等もあります。
近年では、太陽や星の位置、そして磁気が何らかの影響を渡り鳥に与えているのは実験などから確認されていますが、決定的な証拠はつかめていません。
鳥の神秘的な能力の一つですが、やがて究明されて、人の技術に応用されるでしょう。