ハキリアリは、普通に見かけるアリのように見えますが、菌類をコロニー内で栽培して食糧にしています。ハキリアリの分業体制は、しっかり分かれていて体の大きさも仕事の内容によって変えています。この記事は、農業を営むハキリアリの概要を紹介しています。
1.ハキリアリの大行列
ハキリアリは、南北アメリカ大陸や亜熱帯地域の森や草原のいたるところにいるアリです。赤茶色をしていてちょっと大きめのアリですが、中南米にいくとジャングルだけでなく、町中や広場など、どにででも普通にいます。
ハキリアリは、幅10㎝ぐらいでひしめきあいながら大行列をします。
1-1.ハキリアリの行列の形態
ハキリアリの行列は、植物の葉や花びらを切り取って巣に運ぶものと、巣から出て再び葉や花びらをとりに向かうアリたちです。
採取した葉等は、体の大きなハキリアリが、大あごでくわえて背中にかついで運んでいますが、それらの中には小さなアリが乗っていることもあります。この小さなアリは、ハキリアリの働きアリを寄生バエから守っているハキリアリです。
ハキリアリの役割りは細かく分かれていますが、仕事の内容によって体の大きさまで変えています。
寄生バエは、アリの行列を上から見ていて、隙があれば大きなハキリアリの首に卵を産み付けてしまいます。ハキリアリに卵を産み付けると、卵から孵化した寄生バエの幼虫は、ハキリアリの体内に入って中身を食い尽くしてしまいます。
こんな恐ろしい寄生バエから守っているのが、大きなハキリアリが担いで運んでいる葉の上に乗っている小さなハキリアリです。
2.ハキリアリのコロニー
行列の道程は50〜100メートルぐらい続いて、やがて巣に着きます。巣(コロニー)の外には掘り出した土の山が2メートルも積みあがって山のようになっています。
巣のコロニー内には、何100万匹もハキリアリが住んでいますが、全て雌で構成されています。つまり、1匹の女王アリと、その娘たちです。
雄は、巣を飛び立って未婚の女王アリと交尾するためだけに生まれてきます。そのために雄のアリは、特定の季節に、限られた数だけ生まれてきますが、交尾が終れば死んでしまうため、コロニーの住民は雌アリだけになります。
ハキリアリのコロニーは、トンネルの迷路で繋がれた何千という部屋に分かれていますが、各々の部屋は、人の頭ぐらいの広さがあります。部屋の壁には特殊なキノコの仲間(菌類)が生えています。
部屋の壁は、ハキリアリが運んできた植物片でできた糊のような物質で薄く覆われていて、菌類は壁の物質から養分を得て育ちます。
2-1.ハキリアリのコロニー内に生える菌類とは?
壁に生えてくる菌類は、地上にはえているキノコのような形になるのは稀です。普通は細い菌糸がもつれあった塊になります。
ハキリアリは、樹液等も食べますが、普段は巣の中で栽培した菌類を食べて生活しています。ハキリアリは、まさに農業を営んでいるのです。
3.まとめ
ハキリアリの形は普通のアリのようですが、菌類を栽培する特殊なアリでした。
ハキリアリの分業体制はしっかりしていて、体の大きさも仕事の内容に合わせて違います。
ハキリアリは、情報の伝達も面倒な方法で行い、最も複雑な階級制度を持っています。大変興味深いハキリアリについてこれからも紹介していきます。