オーストラリア北部のマングローブの浜辺の海底に巣を作るウミトゲアリと呼ばれるアリがいます。干潮が終ると巣穴は海水の下になります。巣の中は、海水が入ってきても空気で呼吸できる部屋があって子育てや働きアリたちの避難場所になっています。
1.海底に巣を作るアリ
普通のアリは、強引に水中に入れて石などにつかまらせると、暫くは水中でも歩き回りますが、呼吸はできません。
ところが、ウミトゲアリというアリは、海底に空気を保つ部屋を作って生活しています。
ウミトゲアリのことは、NHK TVの「ダーウィンが来た」という番組で特殊な能力も含めて放映もされたそうです。残念ですが見逃してしまいました。
ウミトゲアリは、本当に常識を覆(くつがえ)すアリです。次に調べた内容を整理して紹介します。
2.ウミトゲアリってどんなアリなの?
ウミトゲアリは、やや毛深いですが普通のどこにでもいる黒いアリと同じように見えます。7mm程のアリです。
オーストラリア北部のマングローブの浜辺付近に巣があります。マングローブの砂浜に穴を掘って巣を作ります。巣の内部は、普通のアリの巣と同じように枝分かれした通路があって、ところどころに部屋がありますが、通路や部屋は砂と粘土層で作られていて、海水が入ってきても崩れない構造です。
普段、巣穴は海水の下ですが、干潮時になると姿を現します。
この時、ウミトゲアリは、エサにする魚の死骸や甲殻類などを探すために巣から出てきますが、満潮になる前には巣に戻ります。
満潮になると、巣は完全に海水に埋もれてしまい、巣穴の通路や部屋の中にも水が入りますが、部屋の一部は浸水しないように作られています。
浸水しない部屋は、エサの保管場所や、幼虫を育てる育児室などです。もちろん、ワーカーなどの成虫のアリたちにとっても、海水が引くまでの大切な待避所として使用します。
しかし、どんなに頑丈な巣を作っても海水の下は、常に水没の危険があります。
また、海水から逃げ遅れるワーカーアリもいるでしょう。
2-1.海水中になげだされるとどうなるの?
ウミトゲアリは、浜辺で生活するため、海水にのみこまれることもあります。そんな時には、仮死状態で数時間過ごすことが出来ます。(考えてみると凄い技です)
また、ウミトゲアリが、水中を歩く時には手脚の毛深い体毛に空気をまとって、そこから呼吸することも可能です。
さらに、ウミトゲアリの体毛は、表面張力で海水をはじくため、アメンボのように水上を素早く移動することもできる優れたツールとしての役割りも持っています。
NHKの「ダーウィンが来た」では、動きが早すぎて目に見えないため、最新の特殊カメラで撮影したそうです。
3.まとめ
まさか浜辺に巣穴を掘って海底で生活するアリがいるとは、想像することも出来ませんでした。
確かに、海水の下で生活すれば、地上で暮らしていた時の天敵からは逃れられるでしょうが、海水の下にも新たな敵はいるような気がします。
水を嫌っているアリが、水を利用して世界を広げたことは驚きですが、地球環境の変化に応じて人の暮らしも、海底や地中に進出するのかもしれませんね。