鳥のクチバシは、ピンセットのような役割をする。「食べる」「羽繕い」「感じること」「物を持ち上げる」などが出来る。クチバシを使うことで脳の肥大化は促される。ところが、鳥は脳の進化を望んでいなかった。鳥は、脳の進化よりも飛ぶことを選んだようだ。
鳥のクチバシの役割
鳥類は進化の過程で、手指を羽にして飛行する道を選んだように見える。鳥のクチバシは、人の手指のようなものだ。人の手指ほどには、微細な作業をすることはできないが、クチバシを使って手指に匹敵する程のことをする。
鳥のクチバシの機能を列挙すると、次のようにさまざまなことが出来る。
- 羽繕い
- 突く、突き刺す、剥がす、壊す、つぶす、割る
- 餌を食べる
- ヒナに餌を与える
- クチバシと舌で、味・温度・触感 固さ等を感じる
- クチバシで物を持ち上げて、投げる
- 細い枝などをクチバシにくわえてぶら下がる
- 巣作りをする
簡単に機能を述べたが、それぞれの項目は、考えている以上に大変な作業だ。
羽繕い
羽繕いは、鳥の能力を適正に保つ上で無くてはならない。鳥の腰部にある尾脂腺(びしせん)は脂を分泌していて、クチバシで分泌された脂を羽毛に塗る作業をしている。
鳥は、こんな細かい作業を、首を回しながらクチバシで行っている。
水鳥の羽毛は、水中に入っても水を弾くことができるし、山地で過ごす鳥の羽毛は、雨などからの防水をする。
飛翔力や保温力を維持するには羽繕いによる日常のメンテナンスは欠かせない。これを毎日、全ての羽毛に行っていることを考えると鳥の大変さが判るだろう。
ヒナへの給餌
鳥類を観察している方なら御存じだろうが、生まれたばかりのヒナは、思っている以上に小さくて目も開けていない。ヒナは、餌をねだる時には小さな口をいっぱいに広げて絶えず動いている。
そんなヒナの小さなクチバシの中に、ヒナが食べられるように餌を投入するのは大変だろう。ところが、親鳥は、クチバシでヒナへの給餌(きゅうじ)をすばやく行うことができる。
このような作業をするクチバシは、精密模型の組立や、外科手術で使われるピンセットのようだ。
クチバシの微細作業と脳の発達
人は、指を使うことで脳を発達させたと言われているが、鳥類のクチバシも同様に鳥の脳を進化させたのだろう。
頭が良いと言われるカラスは、細い枝をクチバシで挟んで樹木の虫穴に差し込んで、虫を捕まえる。インコやオウムは、クチバシを手のように扱って体をぶら下げることだってできる。
カラス、オウム、インコなどの頭脳の発達した鳥は、クチバシを働かせることで脳の発達を促し、脳の進化によって、さらにクチバシを精密に動かせるようになったと推測される。
まとめ
鳥類は、クチバシを手のように扱うことで脳を進化させてきたのだと考えられている。脳の進化は、さらなるクチバシの精細な運動能力の向上を促す。するとさらなる脳の進化が生まれるだろう。
これはまさに正帰還(せいきかん)で、どんどん頭脳が進化することになる。
ところが、鳥は飛行する能力を得るために、体を軽量化した。鳥の頭も小さい。人のように脳を肥大化させることは望んでいないようだ。
人類にとっては幸いだったのかもしれない。