スズメバチは恐れられ、嫌われています。毎年、多くの人が犠牲になるからでしょう。この記事では、スズメバチの本当の姿や、大雑把な生涯を紹介しています。また、スズメバチを撲滅させた時のことも想像しました。人間と野生の生物との共存を願っています。
スズメバチの本当の姿
万一スズメバチに刺されたら、人でも死んでしまうこともあるので人家近くで巣がみつかると大騒ぎになって、大抵は駆除されてしまいます。
私が子供の頃は、カナブンたちと樹液に集まるスズメバチにたびたび遭遇したことがあります。巨大なスズメバチを見ると恐ろしさも感じましたが、スズメバチに無関心をよそおって昆虫採集をする子供たちを襲うようなことはしませんでした。
スズメバチも人を襲うために暮らしているわけではなく、巣の近くに人が入ってきた時に巣を守るために本能的に攻撃を仕掛けるのでしょう。
そんなスズメバチの生態について紹介します。
スズメバチの生涯
スズメバチの女王は、冬眠して越冬します。春になって暖かくなる4月頃から1匹で巣作りを始め、最初の産卵をします。卵は、約5日間で孵化して、幼虫(2週間)、さなぎ(2週間)の計1ヶ月で羽化して成虫になりますが、その間は、巣穴の中ですごします。
尚、羽化した直後の成虫は、体が柔らかいため飛ぶこともできません。そのため、数日間は巣の中で対応できる仕事をしています。
巣作りを始めた頃の女王蜂は1匹で、幼虫のエサ探しや世話をしなければならないため、産む卵も数個程度です。
その後、産まれた子どもたちが成虫の働き蜂になると、産んだ卵の世話や巣の拡張、女王蜂の世話など全ての仕事を、働き蜂が行うようになります。
働き蜂の寿命は、4週間から5週間と短命ですが、子づくりに専念できる環境が整った女王蜂は、コロニーを一気に巨大化していきます。
女王蜂の寿命も1年と短いため、8月頃になると次の世代を担う、オスと女王蜂候補も生むようになります。女王蜂候補が、普通の働き蜂(メス)に比べて大きな体になるのは、特別優良なエサをもらっているためです。
9月〜10月ごろ、オス蜂と女王蜂候補は、結婚飛行のため一斉に飛び立ちます。新天地についた女王蜂候補は、冬になる前にオスから受け取った精子を腹部の袋に溜め込んで越冬します。
女王蜂候補は、木の隙間や土の中などに潜って、冬眠することで冬の寒さをしのぐようです。
スズメバチがいなくなると起こることは?
刺されると痛いし、アナフィラキシーショックになる可能性もあるため、スズメバチを目の敵の様に思う人は多いでしょう。
しかし、昆虫界の頂点に君臨しているスズメバチが撲滅してしまうと、例えば「日本オオカミ」がいなくなって、鹿が増えたために尾瀬の水芭蕉の花や農家が栽培している作物が食い荒らされる問題と同様なことが生じるでしょう。
スズメバチのエサは、クモや、ハエ、アブ、ガ、バッタ、昆虫など多岐に亘ります。スズメバチがいなくなると、植物を食べて食害を招く害虫が大量発生するかもしれません。
人の力で強引にスズメバチを撲滅させてしまうと、生態系のバランスが崩れて、スズメバチが人の生活に与える以上の問題を起こすでしょう。
まとめ
スズメバチに刺されるのは、誰だって嫌です。私は、アシナガバチには何度も刺されたことはありますが、獰猛なスズメバチに刺されるのを想像するだけでも嫌です。
ただし、スズメバチを退治してしまう事ばかりを考えると、将来スズメバチもいなくなってしまいそうです。
スズメバチ研究者の書籍に、「木酢液(もくさくえき)はスズメバチの攻撃性を抑える」ということが記載されていました。
この木酢液のようなもので、人家周辺のスズメバチの巣を、山の中などに移動することもできるようになるかもしれません。
木酢液は、木材を蒸し焼きにした時に出てくる液体で、酢酸を主成分とした、多くの有機成分で構成されています。ドラッグストアなどには、虫除け、除草、消臭目的などで商品化したものが販売されています。
木酢液のような物質の研究が進むことで、人が害虫として考えている生物を、人里から遠ざけることもできるかもしれません。