鳥が飛ぶために、なくてはならない羽毛は、体温維持にも必須ですが、もっとすごい役目をしている羽毛もありました。この記事では、砂漠地帯に棲んでいる鳥の、特別すごい吸水率の羽毛と、スズメバチの攻撃を弱める働きをしている羽毛の事例を紹介しています。
鳥に貢献する特殊な羽毛
鳥が飛ぶためには、なくてはならない羽毛は、鳥たちの体温を維持するのにも必須です。
羽毛布団やダウンジャケットは軽くて、とても暖かいという特徴があって、化学素材が進歩した現在でも、羽毛は暖をとる素材の先頭にいます。
そんな素晴らしい鳥の羽毛ですが、さらに特殊な能力を備えて鳥の生活に貢献している羽毛もあります。
乾燥地域に住んでいる鳥のサケイ類が持っている羽毛は、「水分を吸い込んで水を子供に届ける役目」もしています、また、ハチクマという鳥は「スズメバチの攻撃を防御」する羽毛を持っています。
次に、特殊な羽毛の能力について紹介します。
給水能力が凄い羽毛
通常の鳥の羽毛は、飛ぶために、できるだけ軽量にできていて、カラス大の大きさの鳥の、胸や背中の羽毛は、0.001グラム程と言われています。(これだけ軽いと量るのも大変です)
羽毛は、軽量化のため、微細構造的な工夫や、血液を循環させないで乾燥した組織にする等の工夫をしています。そのため、鳥類は、羽毛が濡れないように羽毛に油分を塗るなどのケアを毎日一生懸命しています。
ところが、砂漠などの乾燥した地域で生活する「サケイ(鳥)類」は、水の確保をしなければなりません。自力では生活できないヒナに水を与えなければならないからです。
このため、サケイ類の親鳥(特にオス親)は、腹部の羽毛に水分を含ませて20~30kmも離れた水辺からヒナに水を届けています。
サケイ類の腹部の羽毛は、内側の表面に多量の水を溜め込むことができるような独特な微細構造をしています。
一度に運ぶ水分量は、15~20cc程ですが、羽毛の給水能力は、合成スポンジの2倍もあると言われています。
スズメバチの攻撃を防ぐ羽毛
ハチクマという鳥は、ミツバチの巣やスズメバチの巣を襲って、ハチの幼虫やさなぎを食べてしまいますが、巣を襲われたスズメバチは大群で、ハチクマを撃退しようと攻撃します。
ミツバチならともかく、スズメバチの大群がハチクマの体中を攻撃していることを想像してください。普通の動物ならとても耐えられないでしょう。人間なら絶対に無理です。
ところが、ハチクマは平然と、ハチの幼虫を食べ続けます。
この不思議なハチクマの能力を研究しているグループでも、まだ明確には究明されていないようですが、次の内容が確認されています。
ハチクマの羽毛の特殊性
ハチクマの羽毛には、ハチの攻撃を寄せ付けない特殊な防御装置が備わっているようです。
- ハチクマの目の周りの羽毛は、小さなうろこ状になっていて、ハチの針が皮膚まで届きにくくなっていました。但し、これだけではハチの攻撃は防ぎきれません。
- ハチクマの羽毛(特に頭部)には、糸状の微粒子が付いています。この微粒子は、ハチをおとなしくしてしまうことが実験で確認されています。このことは、実際にハチクマがスズメバチの巣を襲った時も、見られます。(最初はハチのものすごい反撃がありますが、少し時間が経過すると、ハチの攻撃は静まります)
糸状微粒子
ハチクマの羽毛にある糸状微粒子を電子顕微鏡で観察(6000倍)すると、ふにゃふにゃしていているものが複雑にからみあっていることまで判っていますが、それ以上のことは判明していません。
何らかの化学物質がハチを不活性化させているのでしょうが、研究の成果に期待しましょう。
まとめ
鳥の羽毛は、飛ぶために、なくてはならないのは勿論のこと、体温維持にも必須ですが、生きるために特殊な進化を遂げるものもありました。
事例では、乾燥した地域で生活する「サケイ(鳥)類の、合成スポンジの2倍もある羽毛と、スズメバチの攻撃を回避するハチクマという鳥の特殊な羽毛の働きを紹介しました。
生物の体には、まだ究明されていない特殊な能力も秘められているでしょう。