キイロスズメバチが市街地に進出してきた理由を、キイロスズメバチの体長や性質、天敵との関係などから分かりやすく紹介しています。また、女王バチの生涯などから、スズメバチの巣の寿命についても説明しています。スズメバチの疑問点は解消されるでしょう。
市街地周辺に巣を作るスズメバチ
近年、市街地にキイロスズメバチが巣を作って問題になっていて、スズメバチに刺される被害も目立っています。スズメバチは山の方にいるものだと思っていましたが、キイロスズメバチは市街地で増えていました。
キイロスズメバチというのは、全身が短い体毛で覆われていて、スズメバチの仲間では、小型ですが、いわゆるスズメバチのイメージどおりのハチです。周辺で見かけら怖いでしょう。
ちなみにキイロスズメバチの体長は、17mm〜24mm程ですが、オオスズメバチは、27mm〜40mmもあります。
このキイロスズメバチが市街地で増加してきた理由を調べてみました。
キイロスズメバチが市街地で巣を作る理由
キイロスズメバチが人口の多い市街地で巣作りをするのは、次のような理由と考えられています。
- スズメバチの餌は、もともとは木の幹や枝ですが、キイロスズメバチは、気が荒い性質のため、昆虫などの小動物も食べます。また、市街地には生ごみや空き缶に残ったジュースなどがあることから、何でも食べてしまうキイロスズメバチにとっては、市街地はエサに困らない場所です。
- キイロスズメバチの天敵は、オオスズメバチです。オオスズメバチは、秋になると他のハチの巣を襲って全滅させてしまいます。
本来、オオスズメバチの好物はミツバチですが、体長が4㎝もあるため、小型のキイロスズメバチも襲撃の対象です。オオスズメバチに襲われたキイロスズメバチは全滅するしかありません。
オオスズメバチの巣は、地中や木の洞(ほこら)などで、市街地からは離れたところにあります。
キイロスズメバチにとっては、民家の屋根裏や軒下、床下、排水溝等の人工物周辺は、天敵から離れた場所になります。そして、なんでも食べるキイロスズメバチにとっては、市街地は食べ物も豊富にある理想的な場所なのでしょう。
これが、キイロスズメバチが市街地に進出してきた理由です。
では、スズメバチの巣が軒下などに作られてしまうと、毎年巨大化してしまうのでしょうか? 巣の寿命はどれくらいなのでしょうか?
スズメバチの巣の寿命
スズメバチは外形がアリに似ています。アリと同じように巣の中で、各々の役目が決められた規律正しい社会生活をします。
アリの場合は、女王アリが産卵数を増やしながら数年間に亘って巣を巨大化しますが、スズメバチの女王の寿命は、1年程です。
次期女王以外のハチ(働きバチやオスバチ、役目を終えた旧女王バチ)は、越冬もしないで死んでしまいます。
そのため、内部が何層もある巨大でりっぱな巣も、その年だけで廃棄されます。
スズメバチの巣は本当に巨大で立派です。
もったいないように感じられますが、もしもアリの巣のように毎年巨大化していくことを想像すると、これで良かったと考えてしまいます。
アリと比べると、スズメバチの女王は考えている以上に短寿命ですが、どんな一生なのでしょうか?
女王バチの一生
スズメバチの女王の寿命は凡そ1年です。前年の暖かい時期に生まれた次期女王は、その年の冬は、寒さをしのげる場所に潜んで越冬します。越冬するのは交尾を終えた次期女王だけです。
翌年の春になると越冬から目覚めた次期女王は樹液等を食べて、体力を回復させると、直ぐに巣作りに取り掛かります。
まず、巣の場所の選定です。女王バチは、時間をかけて、できるだけ広い場所を探索して最適な巣の場所を決めます。
そして、巣作りの場所を覚えるために飛行して周囲環境を覚えます。同時に巣作りのための素材収集に励みます。
この時は、女王バチしかいないので、1匹だけで巣作りをしながら、卵を産みます。そして、卵からふ化した幼虫の世話をします。
この時の労力は、女王に相当の負担をかけるため、上手く行かないケースも多いそうです。(やはり、自然界は厳しいですね)
約1ヶ月後に働きバチが誕生すると、女王は雑務から解放されて産卵に専念するようになります。巣作りは、生まれてきた働きバチたちが協力してするので、巣の大きさは急激に拡大していきます。
まとめ
スズメバチの仲間では少し小型のキイロスズメバチは、体の大きなスズメバチが天敵です。
生ごみや空き缶に残ったジュースなど、何でも食べてしまうキイロスズメバチにとっては、市街地はエサに困らない場所です。
その上、天敵から離れている民家の屋根裏や軒下、床下、排水溝等の人工物周辺は、理想的な場所なのでしょう。
これが、キイロスズメバチが市街地に進出してきた理由です。
但し、アリのコロニーの様に毎年、巣が巨大化していくことはありません。女王バチの寿命が短いため。巣は、1年で廃棄されてしまいます。