進化した動物では、卵子と精子を受精させて繁殖していますが、多くの昆虫では、メスの遺伝子だけを引き継いで繁殖する単為生殖も可能です。単為生殖で爆発的に増殖するアブラムシや、自分で単為生殖を選べるシロアリについて内容を紹介します。
メスだけで子孫を増やすことのできる生物
地球上で、メスだけで子孫を作れる生物は、細菌や原生動物を中心だと考えていましたが、鳥類の七面鳥でさえ、単為生殖で子孫を作ることができます。生物の中で、単為生殖をしていないのは哺乳類だけだったようです。
単為生殖をする昆虫
単為生殖する生物は、昆虫や魚類、爬虫類などで広く知られています。特に昆虫には単為生殖の種が多く存在していました。
単為生殖できる昆虫の分類群
昆虫は、トンボ目、バッタ目、カメムシ目、チョウ目、ハチ目、ハエ目、コウチュウ目などの殆どの「目」でメスの遺伝子だけを引き継ぐ単為生殖が可能でした。
クローン増殖で増えるアブラムシ
アブラムシは、特定の時期に大量に発生して野菜などに被害をもたらします。カメムシ目のアブラムシ科の仲間は、自分と同じ遺伝子のクローンを産むことができます。
どうやら、アブラムシは、クローン増殖で短期間に爆発的に数を増やしていたようです。
同じ遺伝子で生まれたクローンの体内には、ロシア人形のマトリョーシカのように、既に子供を宿しているため、あっという間に大増殖が可能なのでしょう。
風変わりなシロアリの繁殖形態
シロアリの繁殖様式は、ちょっと変わっています。最初にオスと、メスの羽アリ(シロアリ)が夫婦になって一族が作られます。
シロアリは、有性生殖で、働きアリ、兵隊アリ、羽アリ(シロアリ)を産みますが、女王の後継者だけは単為生殖で産みます。
どうやって生殖方法を選べるの?
シロアリの女王は、受精嚢(じゅせいのう)を持っていて、夫婦になったオスの精子を体の内部に保管していますが、卵子にある卵門の孔を閉じることで、精子を通過させないことも出来ます。
つまり、シロアリは、女王の意志で有性生殖か、単為生殖を選ぶことができるのです。(平成26年の京都大学研究報告)
非効率的な有性生殖
地球上の多くの生物は、単為生殖で子孫を残せますが、進化した多くの動物は卵子と精子を受精させる有性生殖で子孫を作ります。
メスだけで繁殖することができれば、アブラムシのように短期間に大増殖可能ですが、地球上の進化した動物の殆どは、非効率的な有性生殖を選んでいます。
これは進化生物学の謎とされていて、多くの研究者の研究対象になっています。
まとめ
地球上の多くの生物は、単為生殖で子孫を作れますが、多くの動物は卵子と精子を受精させる有性生殖で子孫を作ります。
進化の過程で、非効率でも有性生殖の方が利点大と判断されたのでしょう。
昆虫の機構は複雑ですが、多くは単為生殖可能なため、研究対象として丁度良いのです。
シロアリの研究などを通じて、さらに単為生殖と有性生殖の理解が深まることが期待されます。