自分のオシベで受粉する自家受粉は、正常な子孫を残せなくなる可能性が高くなります。そのため様々な方法で避けようとします。ホタルブクロは、とても可愛らしい花ですが、特異な方法で自家受粉を避けています。ホタルブクロの手法を簡潔に紹介しています。
自家受粉を避けたい植物の気持ち
動物がそうであるように、植物も、自分のオシベで受粉する自家受粉をすると、正常な子孫を残せなくなる可能性が高くなります。
そのため、自家授粉を避けて、できるだけ同種の他の花粉で受粉したいと考えています。
自家授粉を避けるためのホタルブクロの工夫
ホタルブクロは、自分のオシベで受粉しないように、次のような工夫をしています。
- ホタルブクロ(A)のオシベは、まだ花が咲ききらない時に、既に成熟していて、葯(やく)から出した花粉を(A)のメシベの側面に付着させます。
- メシベの側面に(A)のオシベが付いても、(A)のメシベは成熟していないため受粉しませんが、(A)のオシベは付着しやすいように細かい毛を、オシベの周囲に密生させています。
- (A)のオシベは、(A)のメシベの周りに花粉をつけると、しおれてしまいます。
- やがて、(A)の花が咲き始めるとポリネータのトラマルハナバチがやってきて、ホタルブクロの袋状の花の中に入り込みます。
トラマルハナバチの体は、ずんぐり丸いため袋状の花の通路に密着します。この時、まだ成熟していない(A)のメシベの周りに付いている(A)のオシベは、確実にハチに受け渡されます。
(A)のオシベの花粉を付けたハチは、別のホタルブクロ(B)の花に向かいます。(B)のメシベが成熟していれば、(A)のオシベが(B)のメシベに付着して受粉します。 - やがて、(A)のメシベが熟成時期をむかえる頃には、(A)のメシベの周囲にある細かい毛は脱落します。つまり、(A)のメシベに付着していた、(A)のオシベも落ちて無くなります。
- このような仕組みのため、 (A)のオシベは、(A)のメシベが成熟した時には、既に存在しないため、自家受粉しません。
この一連の機構は、複雑で、特異なものですが、自分の花粉を他のホタルブクロに供給して、他のホタルブクロからの花粉を受粉する仕組みとしては、とても精巧です。
このような仕組みで自家受粉を避ける手法は、キキョウやツリガネニンジンなどでも持っています。
まとめ
動物と同じように、植物も、自分のオシベで受粉する自家受粉は、正常な子孫を残せなくなる可能性が高くなります。自家授粉を避ける手法は植物によって、さまざまですが、ホタルブクロの方法は、かなり複雑で特異なものでした。
簡単に言うと、オシベとメシベの成熟時期をずらして、自家授粉を避ける手法です。
但し、周囲にある、成熟した同種のホタルブクロには、自分の花粉を提供して受粉させながら、自分のオシベによる自家受粉は避けるという絶妙な手法です。
ホタルブクロとの出会い
夏の初め頃、日がかげった河川敷を散歩していた時。土手に紫色の袋のような花を見つけました。これが、ホタルブクロとの出会いです。
河川敷の土手は、様々な雑草が生い茂っていましたが、ホタルブクロの花を見つけると、足が止まりました。
ホタルブクロの名前は、子供が袋のような花の中にホタルを入れて遊んだことに由来しています。
本当にホタルを花の中に入れてみたいと思うような、ひ弱そうで可愛い花です。(花の中でホタルが光ると、ピンクの袋がうっすらと明るくなりそうに感じられます)