キョクアジサシという鳥は、南極から北極に渡って夏を過ごした後で南極に戻るため、年間の飛行距離は、地球1周分と考えられていました。ところが調査の結果は、その倍の距離でした。キョクアジサシは、何故、それ程の長距離を飛行するのでしょうか?
キョクアジサシの渡り
キョクアジサシは、渡り鳥の中でも最も長い距離を飛ぶ鳥と言われています。それは、南極の夏が終わる頃になると、子育てと越冬のために北極に渡るからです。
キョクアジサシは、南極から北極に渡って夏を過ごした後で南極に戻ります。南極には陸地があるため、冬になると極低温になってしまうためです。
そのため、キョクアジサシの飛行距離は、年間で地球1周分の約4万キロメートルと考えられていました。
ところが、調査によると、往復で9万キロメートルを超える個体もいることが判ってきたのです。
キョクアジサシとはどんな鳥なの?
キョクアジサシは、チドリ目、カモメ科、アジサシ属で体長36㎝、体重100g程の小さな鳥です。
ハトと同じぐらいの大きさです。キョクアジサシは、白い体と、長くてV字に開いた尾羽、ドーム型の頭、短い足が特徴ですが、外見は、どこにでもいるような普通の鳥に見えます。
キョクアジサシの飛行距離
キョクアジサシは、体重100g程の小さな鳥です。大きな発信機を付けた調査は出来ませんが、南極から北極に渡るため、往復では地球1周分の4万km程を飛ぶと考えられてきました。
その後、英国南極観測局が、1.4gの軽い追跡装置を開発しました。この追跡装置をキョクアジサシの足に取り付けて調査したところ驚きの結果が得られました。
キョクアジサシの渡りは、推定した4万kmを大きく超えていました。往復で9万kmを超える個体が確認されたのです。
キョクアジサシが最短距離を飛行しない理由
調査結果を見ると、キョクアジサシは、さまざまな蛇行ルートを飛んで目的地に向かっていました。
では何故、キョクアジサシは、最短距離を飛ばないのでしょう。
研究チームのエーバング氏によると、キョクアジサシは、地球の大きな風を利用して風の流れに乗って飛んでいたのです。
地球上に吹く大きな風の流れ
南極に向かって吹いている大きな風の流れは、「西アフリカ沿岸に沿って南下するルート」と「大西洋を渡ってブラジル沿岸を南下するルート」があります。
この大きな風に乗って飛行すると飛行距離は長くなりますが、エネルギー的には節約できます。キョクアジサシは、体力温存のために地球に吹いている大きな風の流れに乗って飛んでいたのです。
同様に南極から北極に向かう場合は、その方向に沿って吹く風を見つけて、風に乗って飛行していました。
これが、キョクアジサシが、最短距離を飛ばないで遠回りをしていた理由です。
まとめ
キョクアジサシという渡り鳥は、南極の夏が終わる頃、子育てと越冬のために北極に渡るため、最も長い距離を飛ぶ鳥と言われています。
キョクアジサシは、100g程の小さな鳥ですが、南極と北極間を渡ります。そのため、1年間の飛行距離は、地球1周分の4万キロメートルぐらいと推定されていました。
その後、英国南極観測局が開発した軽量(1.4g)の追跡装置によって、飛行ルートと年間の飛行距離が明らかになりました。
その結果、年間の飛行距離は、推定した4万kmの倍の距離を飛んでいることが判りました。
飛行距離が長い理由は、風の流れに乗って飛ぶことでエネルギー消費を少なくしていたからです。距離は長くなりますがキョクアジサシにとっては最良の飛び方なのでしょう。
ちなみに、キョクアジサシの寿命は30年です。年間に8万km飛ぶと、生涯で240万kmも飛んでいることになります。