コウテイペンギンは、現存するペンギンの中では最も大きな種類です。海中ではスマートに泳ぎますが、地上では考えられない程辛抱強くて、しかも好奇心が強いと言われる素晴らしい鳥です。この記事ではコウテイペンギンの過酷な子育て方法を紹介しています。
コウテイペンギンの子育て
コウテイペンギンは、現存するペンギンの仲間では、最も大きいペンギンとして、南極大陸で生息しています。繁殖シーズンは、最も過酷な秋から冬にかけて始まります。
コウテイペンギンの子育て方法
南極大陸には陸地があります。コウテイペンギンは、海水が凍りついた定着氷上という氷の上を繁殖地に選びます。しかも、氷の上と言っても、波打ち際から50kmも離れたところまで歩いて行った場所です。
ペンギンの脚で50kmも歩くのですから大変です。繁殖行動は、3月〜4月頃からですが、南極では既に秋の季節です。
つまり、秋の終わりから冬に子育てをすることになります。卵は、5月〜6月頃(真冬)に生まれます。
過酷な環境でのオスの抱卵
メスが産んだ卵は、パートナーのオスが抱卵して温めます。オスの抱卵嚢(ほうらんのう)は足の上の両足の間にあって、30℃程の温度を保っています。
しかし、冬の南極は氷点下60℃になることもある極寒地です。吹き飛ばされそうな風が吹き荒れている環境です。当然、食べるものもありません。
抱卵するオスは身を寄せ合って、立ったまま眠るようにじっとこらえて過ごします。集団の周囲の環境は過酷のため、想像以上に体力を奪われます。
このため、オスは卵を両足の間に抱えながら、少しずつ場所を交代します。
その後、メスが戻ってくる時期(生まれてから65日目頃)には、卵から雛(ひな)が出て来ます。この時、オスは食道から脂肪分とタンパク質を含んだ栄養物質を口に戻して、雛に与えます。
雛はオスの暖かい抱卵嚢の中で過しますが、オスの栄養物質にも限りがあります。
そのため、雛が卵から産まれてから10日以内にメスが戻らないと、抱卵しているオスの生存に必要な栄養分も尽きてしまいます。
戻ってきたメスと再会できると、オスは餌を探しに海まで歩きますが、この時に体力が尽きることもあるようです。
メスが戻って来てからの子育て
海から戻ってきたメスは、雛の為に胃に蓄えた食べ物を吐き出して、雛に与えます。数週間後には、海にエサをとりに行ったオスが戻って、メスと同様に胃に蓄えた食べ物を吐き出して雛に与えます。
これ以降は、オスと、メスで交代しながら雛にエサを運んで食べさせます。
やがて、雛が成長してさらにエサを欲しがると、両親で海に出かけてエサを運ぶようになります。
そのころから、雛ばかりの集団が出来て、子育てをしていない若鳥に守られながら少しずつ海岸に向かいます。
雛の集団が海岸に着くころには、南極の夏を迎えて、親子ともども羽は夏仕様のものに変わります。
尚、コウテイペンギンは、1度の産卵で、1個だけ卵を産みますが、あまりにも消耗が激しいため、2年か3年に1度しか産卵しないと言われています。
コウテイペンギンが過酷な子育てをする理由
コウテイペンギンは、氷の上を50km以上も歩いて繁殖地を選んで、極寒の冬の季節に子育てをします。子育ては、親ペンギンの死を招いてしまう程、過酷な環境です。
このような厳しい環境を選んで子育てをする理由は、次の①〜③と考えられています。
- 海から50kmも離れた分厚い氷の上なら、シャチやヒョウアザラシのような捕食者から逃れられる。
- 雛が成長して自由に動き回れるようになるまで、氷は解けない。
- 過酷な冬に子育てをすれば、親離れした雛が自由に活動して餌をとる季節を確保できる。
まとめ
コウテイペンギンは、氷の上を50km以上も歩いて繁殖地を選んで、極寒の冬の季節に子育てをします。子育ては、親ペンギンの死を招いてしまう程、過酷です。
この理由は、厳しい環境を利用して雛が自由に動き回れるようになるまでの成長期間をかせいでいるのでしょう。
水族館にいるコウテイペンギンは、じっとしているイメージしかありません、ところが、南極にいる時には、とても人懐こくて、隊員が構えるカメラの前やテントの周辺に集まってくるそうです。
地上では、どことなく不格好で愛嬌がありますが、海中では、紡錘形の体で自由に俊敏に泳ぎ回る姿が目に浮かびます。
コウテイペンギンは、海中ではスマートで、地上では辛抱強くて、好奇心の強い、とても愛すべき、鳥でした。