大正時代に、多くのスズメを捕まえて、解剖をして胃袋の中を調査したデータがあります。このデータで、スズメが食べているものや、季節変動などを知ることが出来ました。当時は、スズメは、大変な害鳥と言われていましたが、益鳥の面も確認されています。
大正時代に行われたスズメの食べ物調査
スズメは小さな鳥ですが、昔から農業を営む人にとっては、作物を食べてしまう農害鳥でした。しかし、スズメの子育ての頃には昆虫をくわえている姿を見たこともあります。
スズメは、普段何を食べているのでしょうか。そんな疑問に丁度良いデータがあったので紹介します。
調査は、スズメによる稲の被害が大きかった大正時代に行われたものです。全国で2,617羽のスズメを捕まえて解剖して、胃の内容物を調べたデータです。1923年に当時の農商務省農務局が記録しています。
さまざまな理由からこのようなデータは、現在ではとても取れないと思います。大変貴重なデータとして次に紹介します。
スズメの食べ物の季節変化
上図の資料は、1923年に当時の農商務省農務局が取得したデータです。(岩波科学ライブラリー213 スズメの書籍中に記載された図を読み取って、エクセルで図にしたものです。個々のデータは大雑把ですが傾向は把握できます。)
図のデータは1923年に全国のスズメを2,617羽捕まえて胃の内容物を確認した結果です。胃の内容物の分類は、昆虫などの、動物質と、雑草、それと、穀類の3つに分けられています。
データのカウントの仕方は、昆虫の頭部1つを1個、種子1つを1個と数えていて、重量は不明です。これらのデータを月毎に集計して棒グラフに現したものです。
分類ごとの重量測定データは無いため、スズメが食べた分量については判りませんが、季節的な変化は判ります。
月ごとのデータの特徴
図のデータから読み取れるのは、5月〜9月の期間は、動物性タンパク質の摂取が他の月よりも多いことが判ります。これは、昆虫が多く発生する時期です。この時期は、子育ての季節とも重なっていて、昆虫を食べるからでしょう。
9月に雑草の種子の比率が一気に高くなって、10月から冬季にかけて雑草や穀物の比率が徐々に増えていきます。これは、寒い冬をのりきるためにスズメが栄養を蓄えようとするからでしょう。
スズメの食べ物調査結果から判ったこと
スズメの食べ物調査データの細部は不明のため、(岩波科学ライブラリー213)に記載されていた内容を抜粋して次に記載します。
スズメの胃の内容物
データを見ると、動物質の90%は、昆虫でした。その中で多いものは、ゾウムシ、ハムシ、アリ、クモでした。穀類では、最も多い米が69%を占めていて、キビ、アワの順で続いています。
雑草で多いのは、ノビエ、スズメノヒエ、メヒシバですが、スズメのすんでいる地域や環境で、データは変わっていました。これは恐らく、スズメが食べているものは、巣の近くにあって食べやすいものを採ってきているいるからだと思っています。
まとめ
スズメが食べたものの調査を大正時代にしていました。そして、実際に2,617羽ものスズメを捕まえて解剖まで行って確認していることには驚かされました。
当時は、スズメによる穀物の食害は相当深刻だったのかもしれません。
しかし、このデータで、スズメは大切な穀物を食べてしまう害鳥という見方だけではないことが分かりました。スズメは、穀物に被害を及ぼす昆虫や虫を捕食する益鳥という側面もあったからです。