記事では、貝殻を持っているカタツムリがひなたを避ける理由と、貝殻を持っていないナメクジとの関係を、紹介しています。カタツムリやナメクジは、当り前のような存在ですが、生態はあまり知られていません。きっと、いつもと違うひと時が過ごせるでしょう。
カタツムリは陸に進出した巻貝
地球では、4億年前にオゾン層が地球の周りを覆ってから多くの海の生物が地上に進出しました。オゾン層は、生物に有害な太陽光線の紫外線量を少なくしてくれました。
太陽光線からの有害な紫外線が減った時に、カタツムリも陸上に進出してきたと考えられています。生物学的には、カタツムリという生物は、陸に上がった巻貝です。殻の形が細長くないものがカタツムリと呼ばれていました。カタツムリという名称は、正式なものではなかったようです。
カタツムリは、軟体動物門腹足綱(ふくそくこう)の有肺亜綱に分類されています。漢字は、カタツムリの性質そのものです。これ程素直に分かりやすく表現されていると、可笑しくて楽しくなります。
ではナメクジとは何でしょうか?
ナメクジは、カタツムリと同じグループの生物でした。ナメクジは、カタツムリの貝殻が退化して無くなってしまったものを、ナメクジと呼んでいます。
つまり、マメクジも軟体動物門腹足綱(ふくそくこう)の有肺亜綱です。
腹足綱
腹足綱というのは、腹面が幅広い足になっていて、幅広足で這(は)うように歩く生き物のことです。アワビや、サザエなどの貝は、この仲間に分類されています
有肺亜綱
カタツムリやナメクジは有肺亜綱に属していて、読んで字のごとく肺を持っています。当然、肺呼吸です。主に陸生の巻貝です。カタツムリやナメクジは、エラを持たない代わりに外套膜(がいとうまく)が変化した肺で呼吸をしています。
《外套膜》
外套膜(がいとうまく)とは、体表面が伸びて、体を覆っている膜のことです。この膜には、体から石灰質などのカルシウム等が分泌されて、硬くなっています。外套膜は、硬い殻になって、体の内蔵等を保護しています。
地球の周囲にオゾン層が出来ると、地上面に届く、太陽からの強烈な紫外線が弱くなります。カタツムリは、この時に、海から陸上に進出してきた生き物です。
ナメクジは、カタツムリの貝殻を無くしてしまった系列です。
確かにナメクジには日射しを遮(さえぎ)る貝殻がないので、ひなたに出られないのは理解できます。
しかし貝殻を背中に持っているカタツムリも、ひなたを避けるのは何故でしょうか?
カタツムリの貝殻とは?
カタツムリの貝殻は、内臓を覆(おお)うように外套膜(がいとうまく)が背中側にあります。外套膜からは、炭酸カルシウムが分泌されて貝殻を形成しています。
ここで、貝殻の成分は炭酸カルシウムですが、炭酸カルシウムには、可視光線や紫外線を透過してしまう性質があります。
もちろん貝殻に着いている色素には、紫外線を吸収する効果はありますが、色素量は十分ではありません。
海の中では海水があるため、紫外線や強烈な日射しは、挿しこみません。但し、貝殻には機械的な強度があるので、柔らかい体を守る役目をはたしていたのでしょう。
カタツムリが、ひなたを避ける理由とナメクジの本音
貝殻を持っているカタツムリが、ひなたを避けるのは、貝殻が強い日射しや、有害な紫外線を透過させてしまうためでした。
では、日射しを避けるカタツムリから、さらに貝殻を失くしたナメクジには、どんな利点があるのでしょう。
《貝殻を無くした利点》
- 貝殻を作る必要が無くなるため、余分なエネルギーを使わなくて済む。
- 背中の貝殻が無くなると、狭い場所にも入り込めるようになって自由度が増す。
ナメクジは、貝殻が紫外線を透過させてしまうのなら、いっそのこと貝殻なんていらないと考えたのかもしれません。
ただし、貝殻があれば、貝殻がない時に比べて、体から逃げていく水分を体内に閉じ込める役目もしています。そのため、一旦は貝殻を捨ててしまったナメクジの中にも、再び貝殻を作ろうとしている仲間もいます。(気持ちは分かりますね)
まとめ
貝殻を持っているカタツムリが、ひなたを避けるのは、貝殻が強い日射しや、有害な紫外線を透過させてしまうためでした。
ナメクジはカタツムリと同じ仲間の生物ですが、進化の過程で、貝殻を捨ててしまいました。理由は、貝殻では、必要な紫外線量を遮断しきれないためです。ナメクジは、貝殻を作るために必要なエネルギー量との比較をして、メリットが少ないと考えたのでしょう。合理的な考えですね。