ソメイヨシノは、葉よりも花を先に出す特徴を持っているエドヒガンと、大きな花びらを持つオオシマザクラの良いところを併せ持ったクローンとして誕生した。接ぎ木という手法で全国に広がった。何故、ソメイヨシノは、タネで増やせないのだろう。
ソメイヨシノがタネをつけない理由
ソメイヨシノは、梨(二十世紀)やリンゴ(ふじ)と同様に、「自家不和合性(ジカフワゴウセイ)」という性質を持っている。
自家不和合性は、自家授粉をしても花粉が発芽しないようにする遺伝的な性質のことで、被子植物が、子孫の繁栄の為に、自分の花粉では受粉をしないようにした仕組みだ。
ソメイヨシノの自家不和合性の仕組みは、自家授粉した場合、本来なら花粉が付着した時に伸びて、メシベまで到達するための花粉管が、途中で止まってしまうからだ。
確かに、これでは受粉しない。
このように、ソメイヨシノは自分の花粉を自分のメシベにつけてもタネはできないような機構を備えていた。
ソメイヨシノは、自家受粉では発芽しないが、別の品種の花粉で受粉すればタネはつける。
但し、これでは、ソメイヨシノにはならない。
ソメイヨシノを人工授粉させればタネはできるの?
自家不和合性という性質は、ツボミの時にはないが、ツボミにもメシベの受粉力はある。そのため、人工授粉で対応すれば可能かもしれない。
そこで、自家不和合性を持っているアブラナ科(キャベツ、大根、ブロッコリー等)のタネを作りだした人工授粉の過程を調べた。
アブラナ科のタネ作り
アブラナ科のタネ作りは、細かい手間をかけるだけではない。植物が一酸化炭素中毒を引き起こす寸前の状態を作って、苦し紛れに自家受粉しやすい環境を作り出すなどの実験から生まれていた。
人工授粉を工夫して対応すれば、ソメイヨシノのタネはできるのかもしれないが、それに費やす期間と費用は、目的にマッチするだけの価値はないだろう。
恐らく、膨大な手間と、費用がかかるため、簡単にソメイヨシノを増やすことのできる「接ぎ木」という手法で全国に広がっていったのだろう。
まとめ
ソメイヨシノは、エドヒガンとオオシマザクラを交配させて作られた桜だ。全国の桜の80%以上は、この1本のソメイヨシノのクローンと言われていて、「接ぎ木」で広がっていった。
ソメイヨシノは、1本だけから増えていったクローンだ。しかも自分の花粉による受粉を防ぐ仕組みをもっているために、自然界ではソメイヨシノのタネを作れなかったのだ。
それなら、エドヒガンとオオシマザクラを新たに交配させて同じ桜を作れば良いと考えてしまうが、全く同じ性質を持ったソメイヨシノはできない。
例えば、身近な例では、同じ親から生まれた兄弟を連想すると判るだろう。兄弟は、それぞれ違った個性を持っていて、性格も姿も違う人になる。