アサギマダラという海を渡る不思議な蝶

花に止まるアサギマダラ (2) アサギマダラ
花に止まるアサギマダラ (2)

アサギマダラは、海を渡って2,000km以上も渡りをすることが確認されている蝶ですが、渡りの目的や、どうやって海を渡っているのかなどは解明されていません。この記事では、そんな不思議なアサギマダラの特徴などをまとめて紹介しています。

 

アサギマダラが有名になった経緯

アサギマダラは季節に合わせて南下や北上をします。海を渡って2,000km以上も移動する蝶として、とても有名です。

アサギマダラが有名になったのは鹿児島県の種子島(たねがしま)から、三重県や福島県までの移動が確認されて「渡り蝶」としてマスコミなどで報道されるようになってからです。

その後は、蝶の翅(はね)に油性ペンで印を付けて別の場所で捕獲された時に移動距離が確認できる「マーキング調査法」が流行って、多くの人々に認知されています。

「マーキング調査法」は、時間のかかる手法ですが、昆虫採集をしている楽しさと、自分が印を付けて放した蝶が、遠方まで飛んでいって記録をつくるかもしれない楽しみがあります。そのため、子供から大人まで、多くの人が活動しています。

こんな風にして、多くの人々が協力して調査しているのに、アサギマダラが渡りをする理由は解明されていません。とても不思議な蝶です。

 

アサギマダラとは、どんな蝶なの?

アサギマダラは、タテハチョウ科マダラチョウ亜科に分類されている蝶で、アゲハチョウぐらいの大きさです。おもに熱帯地方にいるマダラチョウの仲間ですが、アサギマダラは、東南アジアからヒマラヤ、中国、韓国、日本など、北部を含めた広い範囲まで生息しています。

日本の生息地は、沖縄から北海道まで全国に分布しています。

 

体の特徴

アサギマダラの体は、バッタなどの昆虫と同様に、頭部・胸部・腹部の3つの部分で構成されています。胸部の背中には4枚の翅(はね)があります。

白色の水玉模様のある胸部は、前胸・中胸・後胸に分かれていてそれぞれに1対の脚があります。なお、前胸には、退化して見にくいですが、小さな前脚もあります。

前翅(ぜんし)は、5㎝〜6㎝あって、他の蝶に比べて細長くなっています。オスとメスの区別はつきにくいですが、オスの後翅(こうし)には、「性漂(せいひょう)」という黒い個所があります。性漂の発香鱗(はっこうりん)という白い鱗粉には、メスを惹きつける匂いが入っています。

腹部には、消化器官や生殖器官が納められていて、呼吸のための気門(きもん)もあります。オスの腹部の後部にある腹端(ふくたん)には、マダラチョウが行う「匂い付」のためのヘアペンシルという器官があります。

 

アサギマダラの丈夫な体

アサギマダラは、外見だけでは判らない強さを持っています。翅は薄いですが、張りがあって、少しぐらいのことでは破れません。また、胸部を押されても平気です。

そして、最も驚かされるのは平均寿命です。モンシロチョウは14日程の寿命ですが、アサギマダラは、マーキングしてから半年後に捕まえた個体が、およそ1,000kmの渡りをしていたことも確認されています。

 

美しい毒素を溜めた体

アサギマダラの翅は、前翅が黒いアミメで、後翅が赤茶色のアミメ模様をしています。しかも、見る角度や光のあたり具合などで、翅の白い部分が「浅葱(あさぎ)色」に見えるため、蝶の中でも美しい翅です。

「浅葱(あさぎ)色」とは、ぼんやり緑色が入った薄い青色のことです。きっと、この色からアサギマダラと命名されたのでしょう。
野生生物が美しくて目立つのは、たいてい危険を知らせる表示です。

案の定、アサギマダラも、体に毒素を持っていました。アサギマダラの幼虫は、キジョランなどの毒草を食べて体に毒素を溜め込んでいました。

成虫の、綺麗で目立つ翅は、毒を持っていることを天敵の鳥などに主張しているのでしょう。

 

まとめ

群がるアサギマダラ

群がるアサギマダラ


アサギマダラは、海を渡って2,000km以上も渡りをする蝶ですが、何のために渡をするのか、どうやって海を渡っているのかなど、まだまだ解明されていないことがいっぱいある不思議な蝶です。

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