イチジクの受粉の方法

イチジク 花・野草
イチジク

花が、内部に隠れているイチジクの受粉は、どのようにおこなわれているのでしょう。受粉方法は、イチジクの花のつき方によっても違います。この記事では、コバチという小さなハチとの共生関係によって受粉が行われている方法について紹介しています。

イチジクの花

イチジクの花

       イチジクの花

 

イチジクの花は、普通の植物の花のようには外側からは見えません。

イチジクの花の構造

イチジクの花は、イチジクを食べると見えてきます。但し、イチジクを食べる人は、実を食べていると勘違いしています。

イチジクの実のようなものを割ると、ピンク色のモジャモジャしたものが見えます。実は、このモジャモジャしたものが花の集合体です。

花の集合体は、花序(かじょ)です。そして、その花序を覆うように袋状になった花托(かたく)で構成された構造物を花嚢(かのう)と呼びます。

つまり、人が食べているものは、花嚢と、その内側の花序です。

ここで、花托は花を支える茎が変形したものです。イチジクの花托は、花序を支えるように包み込みます。

イチジクの実

では、イチジクの実はどこにあるのでしょう。普通の果物では、実は、花が咲いた後に実ります。イチジクの実は、花の先に付いています。

世界のイチジク

イチジク種は、世界中に700種程あります。これらは、熱帯から亜熱帯の温暖な地域に生育していて、上に記載したような構造です。

つまり、イチジクの花は、花嚢の内部にあります。通常、花嚢の内側には入れません。そのため、風による受粉は期待できません。それどころか、受粉を助けてくれる昆虫も入れない構造です。

イチジクの受粉

では、イチジクの受粉はどのように行われているのでしょう。

イチジクの受粉は、コバチと呼ばれる昆虫に依存しています。

コバチという昆虫

コバチは、体長2mm位の小さなハチです(昆虫)。ハチ(コバチ)はイチジク種ごとに、種が分かれています。つまり、イチジクの種類によって、コバチの種類も違います。

イチジク種には、入り込めるコバチが決められているようです。但し、例外として、一部のイチジクには、種類の異なるコバチが数種類入り込むこともあります。

イチジクの受粉は、コバチだけによって行われています。その方法は次のように行われています。

イチジクの受粉方法

花が花嚢内にあって、コバチに依存しているイチジクの受粉方法は、ちょっと複雑です。しかも、雌雄同株(しゆうどうしゅ)と雌雄異株(しゆういしゅ)のイチジク種によって手法が異なります。

《雌雄同株とは》

雌雄同株(しゆうどうしゅ)とは、同じ花嚢内に雄花(オバナ)と雌花(メバナ)が付いている種です。雄花とは、メシベのないオシベだけの花です。逆に雌花には、オシベはありません。

《雌雄異株とは》

雌雄異株(しゆういしゅ)とは、同じ花嚢内には、雄花か雌花のどちらかだけが付く種です。

雌雄同株の受粉方法

雌雄同株のイチジク種では、同じ花嚢内に雄花と雌花があります。但し、同じ花嚢内では、雌花の方が雄花よりも先に成熟します。

このイチジクに特化したコバチのメスが、やってくると、コバチは、閉ざされた花嚢の入口をこじ開けるようにして潜り込みます。この時、イチジクの狭い入口でコバチのメスのハネや触覚は、むしり取られてしまいます。

花嚢の内部に潜り込んだメスのコバチの体表には、花粉が付着しています。この花粉で花嚢内の雌花の受粉が行われます。

受粉時のかけひき

花嚢内に潜り込んだ、メスのコバチは、雌花の先端から産卵管を入れて、子房に卵を産み付けます。やがて、卵からフカしたコバチの幼虫は、子房を食べて成長します。

但し、これではイチジクにとっては何のメリットもありません。そこで、イチジクは、コバチが産卵できないような工夫をしています。

《イチジクの工夫》

イチジクは、コバチの産卵管が子房に到達すると産卵されてしまうため、花柱の距離を長くしました。ただし、イチジクは、コバチがいなくなれば受粉できません。そのため、全ての花柱を長くしないで、一部の花柱だけを長くしています。

このようにすれば、末永く長く共生できるのでしょう。

イチジクのこのような工夫で、花柱の長いイチジクは子房を食べられずに成熟することができます。

逆に、花柱の長いイチジクに産卵しようとしたコバチは、子孫を残さないで、花嚢内で死んでしまいます。

では、花柱が短くて子房を食べて成長したコバチの幼虫は、どうなるのでしょうか。

コバチの幼虫のその後

花柱が短い場合、コバチは子房を食べて成長します。こうして成長するコバチは、蛹(さなぎ)を経て羽化後に成虫になります。この時、メスのコバチにはハネがありますが、オスのコバチにはハネはありません。

但し、オスのコバチは、メスよりも先にフカして、メスがフカするのを待ち構えています。メスのコバチと交尾するためです。

オスのコバチは、交尾後にメスが花嚢から抜け出せる穴を掘って、生涯を閉じます。そのため、オスのコバチにはハネがないのでしょう。(何か、せつないですね。)

メスのコバチは花粉を体表などに沢山付着させてから、オスのコバチが開けてくれた穴から外に飛び立ちます。

そして、メスのコバチは、別のイチジクに飛んで行きます。メスのコバチは、成熟したイチジクを匂いで嗅ぎ分けて、花嚢内に潜り込みます。

その後は、母親コバチがたどったことの繰り返しです。

雌雄異株の受粉方法

雌雄異株(しゆういしゅ)では、同じ花嚢内には、雄花か雌花のどちらかだけが付く種です。雌雄異株のイチジクでは、今まで紹介した、雌雄同株(しゆうどうしゅ)のイチジクとは異なる方法で、受粉します。

雌雄異株のイチジクの受粉方法については、別のブログで紹介することにします。

まとめ

イチジクの場合、人が食べているものは、花嚢と、その内側の花序です。このように、イチジクの花は花嚢内にあります。

その為、イチジクの受粉方法は複雑です。しかも、雌雄同株(しゆうどうしゅ)と雌雄異株(しゆういしゅ)のイチジク種によって手法が異なります。

今回は、雌雄同株のイチジク種の受粉方法のみを紹介しています。

イチジク種は、世界中に700種程ありますが、これらの受粉を手助けする昆虫は、イチジク種毎に決められた、コバチ種によって行われています。但し、数種のコバチがやってくるイチジク種もあります。

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