昆虫から学んだ応用技術|昆虫ミメティクスを活用した空調設備

蟻塚 昆虫・虫
蟻塚

昆虫が持っている優れた機能や形には、人間の技術が及ばないものが多々あります。そこで、昆虫をまねして、工学や医療分野などに応用する「昆虫ミメティクス」が盛んに行われています。この記事では、シロアリの蟻塚をまねた空調設備の例を紹介しています。

昆虫から学ぶ応用技術

生物が長い進化の過程で形づくってきた形態や機能は、自然にマッチしています。しかも、生き延びるための工夫も盛り込まれています。

昆虫ミメティクス

バイオミメティクスとは、生物が持っている優れた機能や形をまねて、工学や医療分野などに応用することです。これを、昆虫に特化したものを昆虫ミメティクスと呼びます。

昔から昆虫は、多くの民族の食用に供されてきました。また、絹やハチミツを提供したりする益虫として人々の生活で活用されてきました。

バイオミメティクスという観点で昆虫をみると、単に資源として役立つというだけではありません。昆虫の形態や機能には優れていて、学ぶべき点が数々あるからです。

昆虫の持っている特性をミメティクスとして活用すれば、人類の生活に役立つとともに地球環境の保全維持にも寄与します。昆虫ミメティクスの研究も盛んですが、既に実現しているものもあります。この中から気になるものを紹介します。

蟻塚をモデルにした自然冷却工法のショッピングセンターの例

アフリカにあるジンバブエ共和国のハラレ地区は、標高1600mの高地にある市です。夏でも平均気温は20℃と涼しいところです。ここに蟻塚をまねして作られた自然冷却工法で建てられたイーストゲートショッピングセンターがあります。

なお、この蟻塚は、アリではなくて、ゴキブリの仲間のシロアリによって作られた塚ですが、蟻塚と記載しています。

イーストゲートショッピングセンターは、1996年にオープンした9階建ての建物です。この建物は、昆虫ミメティクス技術で、エアコンなどの人工的な設備なしで年中快適に過ごせる換気を実現しています。
これと同規模の建物と比較すると、換気・冷房にかかるエネルギーを90%も削減したと言われています。
この建物の昆虫ミメティクス技術は、アフリカのサバンナにいるオオキノコシロアリがモデルです。シロアリの蟻塚は、地上10mにもなる大きなものですが、シロアリは土を唾液で固めて作っています。
シロアリの表皮は、薄いため、気温や湿度の変化に敏感な生き物です。そのため、シロアリは、年中、温度変化が少ない巣が必要だったのでしょう。

サバンナの激しい気候と蟻塚内の気温

サバンナの気候は、激しい温度変化があります。夏の昼間は45℃と高温ですが、冬の夜間は0℃にも低下します。
ところが、蟻塚の外は、こんなにも激しい気候ですが、巣の中は常に30℃程度に保たれています。
また、巣の中にはシロアリが食料として栽培しているキノコ菌があります。キノコ菌からは、二酸化炭素が排出されていて、巣内の数百万匹ものシロアリも呼吸しています。
こんな条件ですが、巣の中は、常に新鮮な空気が流れています。

蟻塚の工夫

蟻塚を技術的な視点で、詳しく見ると、塚の表面には無数の穴があって、巣の内部のトンネルにつながっています。このトンネルは煙突効果で換気口の役目をしています。

  • 蟻塚(泥)の目に見えないような小さな隙間は、断熱効果や湿度調節機能を果たしています。
  • キノコ菌が発酵する時の熱は、塚内温度を上げています。
  • シロアリが湿った土を上部に運ぶため、水分が蒸発する気化熱で、塚内の温度を下げる効果を持っていました。

シロアリの蟻塚は、このような効果が重なって、いつも快適な雰囲気に保たれていたのです。

まとめ

昆虫が持っている優れた機能や形をまねして、工学や医療分野などに応用することを昆虫ミメティクスと呼んでいます。

既に、昆虫ミメティクスは様々な形で、人々の暮らしの中で役立っています。その中の「蟻塚をモデルにした自然冷却工法のショッピングセンター」の例は、シロアリの蟻塚をまねて、作られたものです。

サバンナの激しい気候でも、この自然冷却工法のショッピングセンターは、換気や冷房にかかるエネルギーを90%も削減したと言われています。

なお、シロアリは、アリではなくて、ゴキブリの仲間ですが、蟻塚と記載しています。

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