カミキリムシは、大抵は害虫扱いされています。そんなカミキリムシの仲間にも、環境省の絶滅危惧種に指定されたカミキリ種がいます。数年前に絶滅危惧種に指定されレッドリストに掲載された、フサヒゲルリカミキリです。フサヒゲルリカミキリを紹介します。
フサヒゲルリカミキリはどんな虫なの?
北海道、本州、九州等に生息していて、嫌われ者のカミキリムシの仲間なら、普通なら何とか撲滅させたいと思うはずです。
フサヒゲルリカミキリとは、どのようなカミキリムシなのでしょう。
フサヒゲルリカミキリの特徴
フサヒゲルリカミキリは、16mmぐらいの体長のカミキリムシです。藍色(あいいろ)の体は金属のように鈍く光ります。そして、前方に長く伸びた触覚は立派なヒゲのようで目立ちます。
フサヒゲルリカミキリは、見た目もすっきりしていてすばらしい虫です。
但し、フサヒゲルリカミキリの一番の特徴は、草原に生息していることです。
フサヒゲルリカミキリの成虫は、ユリ科のユウスゲの葉や花茎を食べ、幼虫はユウスゲの生茎や根を食べています。そのため、樹木は食べません。
フサヒゲルリカミキリは、5月頃に蛹(さなぎ)になって、6月~8月成虫で活動します。ユウスゲやショウブ等の開花時期に合わせて成虫になります。
このようにフサヒゲルリカミキリは、樹木に害を及ぼさない特殊なカミキリムシでした。フサヒゲルリカミキリは、樹木に害のないカミキリムシとして保護活動の対象になったのでしょう。
フサヒゲルリカミキリの生息数が減ってしまった理由
日本は、元来、湿性草原が少ないため、フサヒゲルリカミキリは、あまり生息していなかったようです。しかも、草原環境は開発や造成で激減しました。
また、フサヒゲルリカミキリは、花が咲く大きなユウスゲのような草でないと食べません。
残念なことに、鹿による草類の食害も影響したのでしょう。
これらの事情が重なって草原が激減したことによって、フサヒゲルリカミキリの生息数が減ったと考えられています。
まとめ
フサヒゲルリカミキリは、採集で絶滅する危険があります。そのため、採集を防ぐ監視活動の強化や人工増殖の導入も必要と言われています。
フサヒゲルリカミキリが食べるユウスゲの保全活動による、生息環境を整えることも必要でしょう。
フサヒゲルリカミキリの未来
フサヒゲルリカミキリは、ユウスゲ類などの草をたべるカミキリムシで、もともと日本では希少で特殊なカミキリムシでした。
しかも、フサヒゲルリカミキリが食べるユウスゲやニッコウキスゲ等が生育する湿地地帯は近年減少に拍車がかかっています。
絶滅危惧種に指定されて保護活動が行われていますが、一度数が減ってしまったものを復活させるのは難しいと言われています。
何とか保護指定の特別な湿地公園などで生きのびて欲しいと願っています。