カリウドバチの狩りは怖い|もっと知りたくなる特殊な習性

ジガバチ 昆虫・虫
ジガバチ

カリウドバチは、獲物を毒針で麻痺させて動けないようにして巣穴に運びます。何故、獲物を殺さないで麻痺させた状態で巣穴に運び込むのか、興味をそそられます。記事では、カリウドバチの狩りの生態を分かりやすく紹介しています。

カリウドバチの狩り

カリウドバチ(ジガバチ、ベッコウバチ、トックリバチなど)の狩りは、ちょっと変わっています。獲物を見つけると次のような行動をします。

カリウドバチの不思議な行動

ジガバチは、アオムシを刺して地面に掘った穴に入れると、どこかに飛んで行ってしまいます。ベッコウバチも、クモを刺してぐったりさせると、獲物を穴に入れてから飛び去ります。

トックリバチは、土でトックリのような巣を作ります。トックリバチは、針で刺して動かなくなった獲物を入れてトックリの蓋をすると、どこかに飛んで行きます。

このようにカリウドバチは、獲物を針で刺すと巣穴の中に引きずり込むため、研究者にも、何をしているのか判りませんでした。

研究者は実験を繰り返して、次のことを究明しました。

カリウドバチが行っていたこと

カリウドバチは、獲物を毒針で刺して動けないように麻痺(まひ)させますが殺しません。
カリウドバチの毒針に刺された獲物は、神経節が麻痺して、生きるための最小限の代謝活動のみをする状態になります。

カリウドバチは、あらかじめ巣の中で卵を産んでいます。そして、巣に運ばれた獲物は、卵からふ化した幼虫のエサになっていたのです。

獲物を殺さないで麻痺させたのは、幼虫のエサが腐らないようにするためでした。

カリウドバチとはどんな蜂なの?

カリウドバチは、漢字にすると狩人蜂と書きます。人が鹿や猪を狩るように、クモやイモムシなどの小さな昆虫を捕まえて巣に持ち帰るハチ類の通称です。

カリウドバチの学問的な分類では、膜翅目(まくしもく)の有剣類の蜂です。カリウドバチは、およそ1億年前の白亜紀前期に寄生性のハチ類から派生したものと考えられています。

カリウドバチには、さまざまなハチ種がいて、スズメバチ科、ジガバチ科、ベッコウバチ科などに属しています。

膜翅目

膜翅(まくし)とは、透明の膜のような翅(はね)のことです。ただし、薄い膜だけでは強度が足りないために、傘の骨に相当する翅脈(しみゃく)が入っています。

膜翅目は、昆虫類の中に分類されていて、ハチ目とも呼ばれています。大きな前翅(ぜんし)と小さな後翅(こうし)があって、完全変態をします。膜翅目は世界中にいる昆虫の仲間です。

有剣類

有剣類とは、巣を守る時の攻撃や、幼虫のエサとなる獲物を捕獲するために、毒針をおしりに持っていて刺す蜂種です。

有剣類には、カリウドバチ・スズメバチ・アシナガバチ・ミツバチや、地上を歩き回るアリバチ類などがいます。

カリウドバチの短い幼虫期間

カリウドバチは、巣の中で育つ幼虫のためにエサとなる虫を殺さないで麻痺させるという手法をとっています。但し、麻痺した昆虫もそれほど長くは生きられません。

このような戦術が成立するためには、カリウドバチの幼虫期間が短いことが前提です。

カリウドバチの卵は2日〜3日でふ化して幼虫になると、1週間ほどで獲物を食べてしまいます。そして、直ぐに蛹(さなぎ)になる準備を始めることが判っています。

幼虫は、順序を考えながら少しずつ獲物を食べます。エサがなくなる頃に、丁度成虫になると言われています。この計画的な行動には、昆虫学者も感心するそうです。

まとめ

カリウドバチの狩りは、獲物を毒針で麻痺させてから巣にひきずり込んで幼虫のエサにします。想像するだけでも恐ろしいですが、生きた獲物を幼虫のエサにすることで腐食を防げるため、とても合理的な方法でした。

考えてみれば、SF映画のエイリアンのような生き物です(あの映画が真似をしたのかもしれません)。

しかし、考えれば考える程、恐ろしさを通り越して、生態をもっと知りたくなるような蜂です。

また、カリウドバチには、究明されていないこともあって、多くの研究者を悩ませています。エサとなる獲物の種は、カリウドバチの種類によって決まっているからです。

この習性は、徐々に獲得したものとは考えられません。

ファーブルが、この習性に疑問を抱いて進化論に懐疑的なことは有名です。

カリウドバチが、獲物を殺さないで、麻痺させる技術に興味を持たない人はいないでしょう。彼らのことをもっともっと知りたくなりました。

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