タマムシの金属光沢の秘密

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タマムシの体は、金属のように輝いて、古い時代から人々の心を魅了していました。そんなタマムシの金属光沢は、構造色と言われるものです。この記事では、タマムシの構造色が、どのようにできているものなのかを、事例を交えて分かりやすく紹介しています。

タマムシの金属光沢の秘密

子供の頃、美しい色をしたタマムシを初めてみた時には、本当に驚きました。
昔は、夏の日の夕暮れ時に、明かりを求めて家の中に飛び込んでくる程、タマムシも沢山いました。今では有り得ないことでしょう。

子供の頃に見たタマムシの体は、まさに金属光沢のようなキラキラした色彩の宝石でした。

タマムシの金属光沢の秘密を調べた結果、タマムシの輝きの秘密は、色素ではなくて、体を覆っている多層膜構造というもので作られていました。

タマムシの外皮構造

タマムシの外皮は、透明な薄い膜が何枚も重なる構造で出来ています。このように薄い膜が重なっているところに光があたると、特別な反射が起こって、金属的な光沢に見えるようになります。

そして、このような発色の仕方のことを「構造色」と呼びます。

構造色が生じる仕組みと事例

光の波長くらい薄い膜を重ねたものを想像して下さい。これ程の薄い膜に光を当てると、膜の上で反射する光と、膜の下面で反射する光が影響し合って、波長光に色が見えるようになります。

この現象が、構造色です。

同じ現象は、CD面の反射光沢や、シャボン玉で見られます。CDでは、録音された音の信号が小さな穴のパターンとして並んでいて、ここに反射した光が影響し合うことで波長光が発色します。

シャボン玉は、水と石鹸などの薄膜構造のため、同じように反射する光が影響し合って、きれいな光沢が見えているのです。

光の波長の長さは?

光は、波の形をしていて、山と谷を繰り返しながら進みます。

波長は、波の山と山、もしくは谷と谷の間の長さのことです。

光の波長の長さは、光の種類によってさまざまですが、人が見える「可視光」とは、400nm〜700nm(ナノメートル)の波長のことです。

ここで、「1nm(ナノメートル)」というのは、10臆分の1メートルの長さのことです。
数字では、ピンとこないかもしれませんが、タマムシの外皮の膜の薄さは、とんでもなく薄い膜であることは判って頂けたことでしょう。

古い時代から日本人を魅了したタマムシ

奈良の法隆寺にある、玉虫厨子(たまむしのずし)は有名です。今回、タマムシを調べて知ったのですが、この玉虫厨子(たまむしのずし)には、4,500匹ものタマムシの前翅(ぜんし)という宝石のような「はね」が貼り付けられているそうです。

玉虫厨子(たまむしのずし)は、仏像やお経の巻物を納める入れ物ですが、これでは、ぜいたくな嗜好品(しこうひん)です。

当時は、今よりも沢山いたのでしょうが、4,500匹ものタマムシを捕まえるのは大変です。おそらく、権力の象徴として作られたのでしょう。

玉虫厨子が作られた本当の理由は判りませんが、古い時代から、タマムシは人々の心を魅了していたことは想像できます。

まとめ

タマムシの美しい金属光沢の正体は、色素ではなくて、タマムシの体の皮膚が薄い膜で作られているためでした。

タマムシの外皮は、とても薄い膜のために、表面と下地で反射した光が干渉(かんしょう)して、さまざまな発色を作り出していたのです。

タマムシの外皮構造などの研究から、ステンレスやチタンなどの金属を発色させる技術が開発されています。この技術は、色素を使った発色ではないため、安全でリサイクルが簡単にできる技術として活用されています。

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