アリは化学物質を駆使する化学昆虫です。アリが分泌する化学物質は、様々な形でアリの生活に役立っています。記事では、具体例でアリが用いる化学物質を示します。アリと化学物質の関わりが分かって、今まで以上に、アリを身近に感じられるでしょう。
アリは分泌物質を使いこなす化学昆虫だった
アリは、多くの外分泌液を出して生活しています。アリは、生物種の中でもひときわ多くの外分泌腺を持っていて、生活の中の様々なシーンで外分泌腺から化学物質を出して生活しています。
つまり、アリは、化学物質を使いこなす化学昆虫です。
アリの代表的な化学物質
アリの代表的な化学物質には次のようなものがあります。
体表ワックス
アリの体表面は、油成分でコーティングされています。油のコーティングは、アリを水から守り、水に濡れても直ぐにはじくだけでなく、体内の水分蒸発も防いでいます。
体表ワックスは、アリ同士が仲間のアリかどうかの区別にも使われています。アリは道で、すれ違う時に、お互いを触覚で触れあって確認しています。
これは、挨拶のようにも見えますが、触れ合うことで、同じ巣の仲間かどうかの確認をしています。アリの研究者によると、アリの体表ワックス成分は、巣ごとに成分比が異なっています。
人から見ると同種のアリにしか見えませんが、体表ワックス成分の違いで巣(コロニー)ごとに区別しています。
同種のアリでも、巣が異なるアリは、仲間とは認識しません。同種のアリが喧嘩をしている場合は、恐らく別の巣のアリです。
尚、サムライアリは、別種のアリ(クロヤマアリ等の働きアリ)を奴隷として巣で働かせています。
その場合、サムライアリは、自分の体表ワックス成分を奴隷アリのものと真似ることで、奴隷アリを騙しています。
道しるべとしての匂い物質
アリは、大きなエサを見つけると、仲間のアリと協力してエサを巣に運びます。この時、アリの行列を作りますが、行列は、次のようにして形成されます。
エサを見つけた働きアリは、腹端等から化学物質を地面に付けながら巣に戻ります。すると巣の他の働きアリは、この匂いを触覚で検知しながらエサのある場所に向かうことができます。
エサを持って巣に戻る時にも、最初のアリと同じように匂い物質を分泌して地面に付けながら巣に戻ります。やがて、エサ場に向かう働きアリの数が増えていき、行列になります。
エサが無くなってしまうと、働きアリは、匂いの化学物質(道しるべフェロモン)を分泌しなくなります。道しるべのフェロモンは、揮発性の化学物資です。
その為、時間とともに匂いが消えてしまいます。やがて、匂いを道しるべにしていた行列も無くなります。
戦いに使う蟻酸
アリは、喧嘩をする時や、強い敵を攻撃する時に腹部から強力な化学物質(蟻酸:ギサン)を噴出します。蟻酸の毒性は強いため、次のようなことも起きると言われています。
- 蟻酸を掛けられると、アリが死んでしまうこともあります。
- 人の目に入ると失明することもあります。
- 人の皮膚にかかると皮膚炎を起こしてしまうこともある。
まとめ
アリから分泌される化学物質は、次のようにアリの生活に役立っていました。
- 周辺環境から体を守る体表ワックスになる。
- 体表ワックスの匂いは、アリ同士の区別にも使われている。
- 移動する時の道しるべに使われる。
- 外敵を攻撃する時の強力な武器になる。
このように化学物質は、アリの生活で、様々な形で活用されていました。