極寒の寒い日に、氷上の水鳥が片脚立ちで、うずくまるように頭部を背中の羽毛に沈めている光景を目にすることがあります。寒々する光景ですが、水鳥は、特別な熱交換システムで寒い冬をのりきっていました。熱交換システムの仕組みを紹介しています。
真冬の湖で見られる光景
寒い冬に、沼や、湖、川を訪れると、北風に吹かれながら水鳥が片脚立ちで、うずくまるように頭部を背中の羽毛に沈めています。
恐らく、水鳥も寒いのでしょう。それなら、水の中ではなく地上に居れば良いと思いますが、天敵を避けるため、やむを得ないのでしょう。
鳥のクチバシとまぶたは皮膚が露出しています。背中の羽毛に首を突っ込む姿勢は、皮膚の露出部が全て羽毛に覆われるため、体温の発散を防いでいます。寒さから露出部を羽毛内に隠すのは、体温の発散を防ぐための当然の行動です。
しかし、脚は、むきだしです。ハクチョウは短い脚ですが、むきだしでも平気です。これでは、脚からどんどん熱が逃げてしまい、低温化してしまうのではないでしょうか?
などと考えてしまいます。水鳥の、冷たい水に沈めた脚は、なぜ凍り付かないのでしょうか?
水鳥の最適な熱交換システム
水鳥の脚は、凍傷になるのではないかと心配する程です。ところが、水鳥の脚の付け根の血管には、寒さに耐える仕組みがあって体を守っていました。
冷気に耐えられる水鳥の脚の構造
水鳥の脚の付け根の部分の動脈と静脈には、特殊な仕掛けがありました、動脈のまわりに静脈が網のようにとりまく構造をしています。そして、動脈も枝分かれしていて網のようになっています。
水鳥の脚の付け根部に見られる動脈と静脈が絡みあう構造は、寒さに耐える素晴らしい仕組みでした。
動脈には、暖かい血液が心臓から送られてきます。そして、脚の付け根部は、暖かい動脈とからみあうようにして冷たい静脈があります。
脚の先に向かって流れる暖かい血液を送り込む動脈は、脚の付け根部でからみあった冷たい静脈に熱を奪われます。
動脈と静脈は絡み合っているため、ここで熱交換して暖かい動脈内の血液は冷やされて脚先に送られます。
脚先は、さらに冷たい外気にさらされていますが、血液が体内に戻るUターンの場所です。
脚先で冷やされた静脈内の血液は、脚の付け根では、動脈と静脈がからみあっています。そのため、冷えた血液は、暖かい動脈血に温められながら、静脈を通じて体内に戻っていきます。
これは、素晴らしい熱交換システムです。
脚先の温度は低いですが、体の中は冷えることなく、40℃〜42℃で保たれます。ハクチョウや、水鳥は、このような熱交換システムを脚の付け根部に持っています。そして、脚先まで絶えず血液が循環してるため極寒の氷の上でも平気なのでしょう。
まとめ
寒い冬の季節には、沼や、湖、川などで、寒い北風に吹かれながら水鳥が片脚立ちで、頭部を背中の羽毛に沈めている光景を目にします。
少しでも皮膚を直接外気にさらさないための水鳥の工夫ですが、羽毛のない脚先は心配になります。
ところが、水鳥の脚の付け根部には、暖かい血液が流れる動脈と、冷たい静脈が絡み合う、特別な構造の熱交換システムがあります。
この熱交換システムは、体の中心部には常に暖かい血液が流れる機構になっています。そして、極寒の冬の季節にも耐えられるように作られていました。
水鳥の脚先が凍らないのは、上記のような熱交換システムで、絶えず血液が流れているためでしょう。