ツルの家族愛のかたち|ナベヅルが常に家族で行動する理由

ナベヅル ツル
ナベヅル

ツルの家族は常に一緒に行動して、生まれた子鶴が独り立ちをするまで子育てに専念します。そして、1年後には、次の子鶴を産みます。しかも、ツルの夫婦は生涯を通じて同じペアで過ごします。家族愛に満ちたツルの行動をナベヅルの例で紹介しています。

仲の良いツルの家族

ツルの家族は、2羽から4羽と決まっています。理由は、夫婦2羽の間に生まれる雛(ひな)は1〜2羽で、その後1年間は家族で過ごすためです。

ツルの夫婦は、一度ツガイになると、死別などの特別なことが無い限り、いっしょに一生を過ごすと言われています。

ツルの家族は、普通の鳥と比べると、家族愛が強いようです。そんなツルの生涯を、ナベヅルで調べてみました。

ナベヅルとは?

ナベヅルは全長1メートル弱程の比較的小さなツルです。名前の由来は羽衣の色が、なべ底の煤(すす)のような色をしているからです。

ナベヅルは、中国東北部、ロシア東南部、やモンゴル北西部などで繁殖をします。その後、冬になると越冬のため、中国の長江(ちょうこう)下流地域や朝鮮半島南部などに南下します。

但し、これらの地域では寒すぎるため、全体の9割ものナベヅルは、鹿児島県の出水市で冬を過ごします。

20世紀初め頃までのナベヅルは、日本の各地で越冬していましたが、現在は、鹿児島の出水に集中しています。

理由は、湿地の開発が進んで生息に適した場所が減少したことと、出水の居心地が良いからでしょう。

出水では、地域ぐるみでツル類の保護活動をしています。

ナベヅルの食べ物

ナベヅルは、植物の根や、カエルなどの両生類、昆虫などを好んで食べる雑食の食性です。

渡来地の出水では、モミ、麦、草の実や、ドジョウ・タニシなどを食べています。また、小麦やイワシなども給餌(きゅうじ)されています。

ナベヅルの子育て

繁殖地は、シベリア南東部のバイカル湖付近や、モンゴル北西部などの針葉樹林内にある湿原です。

ナベヅルは、湿原に巣を作って、5月に1〜2個の卵を産みます。抱卵期間(27日〜30日)は、夫婦で交代しながら卵を温めます。

卵から出て来た雛(ひな)は、直ぐに親とともに餌(えさ)を探すことができます。親鳥は、常に子供と共に行動します。

行動を共にしながら、食べ物の見つけ方や獲り方、水浴びの方法、眠り方、飛び方などの、全てをしっかり教え込みます。

そして、10月頃には、子供のツルも親と同じ大きさに成長して、親鳥とともに2,000kmにも及ぶ渡りをします。

11月頃、越冬地に飛来した家族は、一緒に行動して冬を乗り越え、3月ごろに故郷に飛んでいきます。

4月の初旬頃に故郷(繁殖地)に着くと、親鳥は次の子づくりの準備を始めます。

その頃になると、子供のツルは、親から離れて、同世代の集団を作って行動するようになります。

このように、ツルは1年近くの間、全てを子供の教育に費やします。

子供のツルへの気遣いは徹底していて、空を飛ぶ時や、歩いている時、休憩する時も、子ツルを両親の間に入れて守ります。

ナベヅルが常に家族で行動する理由

数ヶ月前に生まれた若鳥(子鶴)も、シベリア方面から、遠く離れた日本などに飛んでいかなければなりません。

両親から愛情に満ちた指導を受けて、サポートされながら飛行しなければ、2,000kmもの移動はできないからでしょう。

このような事情のため、家族は常に一緒に行動して、1年間に及ぶ教育をするのです。

また、ツルの夫婦が同じペアで生涯を過ごすのは、1〜2羽と数の少ない雛の子育てに失敗しないようにするためです。

理解しあったもの同士の方が、子育てに成功する確率が高いからだと言われています。

まとめ

ツルの家族は常に一緒に行動して、生まれた子鶴が独り立ちをする1年間もの間、子育てに専念します。

理由は、生まれて数ヶ月しか経ていない子鶴たちも、越冬のために、2,000kmもの長距離飛行をしなければならないからです。

そのため、雛が生まれると生きるための全ての手法を学ばせるため、家族は常に一緒に行動します。

また、一度に生まれてくる雛の数が少ないため、両親で手厚いサポートをして雛を守ることで、育つ確率を高めているのでしょう。

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