正面から見た顔は、ピエロのように見えることから海のピエロとも呼ばれるニシツノメドリは、小さなペンギンのようにも見えます。欧米ではパフィンと呼ばれて大人気の鳥です。この記事では、ニシツノメドリの特徴や生態などを分かりやすく紹介しています。
顔が楽しいニシツノメドリ
ニシツノメドリは、クチバシがカラフルで、小さなペンギンのような風体をした鳥です。正面から見た顔は、まるでピエロのように見えるため、海のピエロとも呼ばれています。
ニシツノメドリは、北大西洋と北極海に生息していて欧米ではパフィンと呼ばれて大人気の鳥です。
ニシツノメドリとはどんな鳥なの?
ニシツノメドリは、チドリ目ウミスズメ科に分類されている鳥で、ハトを少し小さくしたようなサイズの鳥です。
丸々とした体に、水かきのある短い足、そして縦方向に平たくて派手なクチバシや、おしろいでお化粧をしたような顔に特徴があります。
白黒の羽や、よちよちと歩く姿はペンギンを連想させます。
特別なクチバシ
ニシツノメドリのクチバシは、オレンジ色に輝く美しい色です。ところが、繁殖期が終ると、色鮮やかな外側はサヤのように抜けて、地味な色のクチバシになります。(顔の色が白いのも繁殖期だけで、普段は、くすんだ灰色です。)
また、このクチバシは、柔軟性が高くて大きく開くことが出来ます。また、クチバシの縁には、ギザギザあるため、数匹の魚を一度にくわえて運ぶこともできます。
生息場所
ニシツノメドリは、アイスランドやスコットランド、スカンジナビア、北アメリカ北東部などの断崖の上に棲んでいます。断崖の上にある巣穴は、ニシツノメドリが1mも掘ったもので、そのコロニー内で結束した社会生活をしています。
但し、陸上よりも海の上での生活が中心です。そのため、陸上で過ごすのは、卵を産んでから卵が孵化するまでの繁殖の期間だけです。
海上で生活できる理由
ニシツノメドリが、海上で生活できるのは、優れた防水性能を持っていることと、海水を飲めるからです。
海水を飲めるのは、体に余分な塩分を排出する機構が備わっているためです。そのため、海の上でも長い期間生活できるのでしょう。
また、潜水も得意で、2分間も水中で翼を使って泳ぎ回ることができます。水深70メートルぐらいまで潜れます。
子育て
ニシツノメドリは、夫婦仲が良くて、同じツガイで一生過ごすと言われています。
理由は、1度の産卵で、1つしか生まれない卵を失敗しないように、気心の知れた経験豊富な親鳥によって育てるからでしょう。
海上生活では、夫婦はばらばらに暮らしています。でも、繁殖期になると毎年同じ巣穴に戻ってきて挨拶を交わしてから、協力して子育てを始めます。
ところが、ヒナが卵から出きて40日間ほど経過すると、親鳥は、雛を残して海に行ってしまいます。おそらく、ヒナの独り立ちを促しているのでしょう。
残されたヒナは1週間ほど経った夕方になると、1羽だけで、食べ物が豊富にある外洋に向かって巣立ちます。
ニシツノメドリが冬に過ごす場所
ニシツノメドリが越冬する場所は、長い間不明でしたが、ジオロケーターという装置と研究者の努力で観察できるようになりました。
《ニシツノメドリが越冬する場所》
米国のメーン州を8月に飛び立ったニシツノメドリは、カナダのセントローレンス湾で豊富な魚を食べるため、暫く滞在します。その後、同様に食べ物が豊富な、米国マサチューセッツ州ケープコッド沖の外洋で過ごします。
また、カナダのマチアス・シール島のニシツノメドリは、次の飛行ルートでした。
マチアス・シール島から、セントローレンス湾と、メーン湾、米国ノースカロライナ州のハッテラス岬付近の飛行ルートです。
つまり、冬季には、食べ物が豊富な外洋で暮らしていたのです。
まとめ
小さなペンギンのような風体で、人々に癒しをもたらしてくれるニシツノメドリは、人懐こくて、欧米でとても人気がある鳥です。
ニシツノメドリは、泳ぎが得意で、繁殖期以外は海の上で暮らしている不思議な鳥ですが、数が減少して心配されています。一度に生まれる卵も、1つだけです。
ニシツノメドリが数を減らしている原因の一つは温暖化に伴って、好物の魚の数が減少したためとも言われています。
ただし、多くの人々から親しまれているニシツノメドリの生息地では生態研究活動も進んで、保護活動も成果がでてきました。期待しましょう。